カレントテラピー 29-7 サンプル

カレントテラピー 29-7 サンプル page 13/28

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く関与する.顕性の2型糖尿病では尿糖排泄増加につれて尿酸排泄量も増加するので,血清尿酸値はかえって低下することが多い.このため糖尿病患者における検討では,インスリン抵抗性の程度と血清尿酸値との相関関係は必....

く関与する.顕性の2型糖尿病では尿糖排泄増加につれて尿酸排泄量も増加するので,血清尿酸値はかえって低下することが多い.このため糖尿病患者における検討では,インスリン抵抗性の程度と血清尿酸値との相関関係は必ずしも認められない.しかし,高血糖を呈さない非糖尿病者における検討では,すでに高尿酸血症を呈する症例の約63%にインスリン抵抗性が認められるとする報告もある1) .この報告では,インスリン抵抗性の程度を示すHOmeostasisModel Assessment(HOMA) -R指数は血清尿酸値と正相関し,尿酸クリアランスとは逆相関を示すことから,先行するインスリン抵抗性が主に腎での尿酸排泄を低下させて高尿酸血症を引き起こす機序が考えられた2) .実験的にも生理的レベル程度の少量のインスリン輸注によって尿中尿酸排泄が有意に低下することが示されており,尿中のナトリウム排泄と尿酸排泄,それらのインスリンによる変化の程度が有意に正相関することが示された(図1) 3) .インスリンは腎尿細管でのナトリウム再吸収を促進し,血圧上昇の一因となる一方で,インスリンによるナトリウムの再吸収促進が尿細管でのナトリウム・尿酸共輸送システムを介して尿中への尿酸排泄低下につながり,高尿酸血症をきたすと考えられている.さらに,インスリン抵抗性や耐糖能異常に伴いやすいレニン・アンジオテンシン系(renin-angiotensinsystem:RAS)の活性化が高尿酸血症をまねく機序も示唆されている.RAS活性化による過剰なアンジオテンシンⅡが直接腎へ作用し,尿酸排泄を抑制する可能性が指摘されている4) .そのため,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を用いることによってRASが抑制されると,インスリン抵抗性が軽減されるほか,尿酸排泄が亢進することが確認されている.さらに,随伴する高血圧などによる腎障害の併発も尿酸排泄を一層低下させるほか,末梢循環不全によって組織低酸素(虚血)をきたすと細胞レベルでのアデニン分解が促進されて尿酸合成亢進をきたすことも考えられている.一般的に,肥満とインスリン抵抗性は密接に関連しており,脂肪蓄積に伴ってインスリン抵抗性は増強し,減量はインスリン抵抗性を改善させる.同様に,肥満患者では高尿酸血症をきたしやすく,減量ΔFEUA(%)3020100-10-20-30-40-50-80-60-40-2002040ΔFENa(%)図1グルコースクランプ法による高インスリン血症下での尿酸排泄率とナトリウム排泄率の変化の相関〔参考文献3)より引用一部改変〕によって血清尿酸値が低下する.減量以外に,インスリン感受性改善薬であるチアゾリジンやビグアナイドを用いた治療によっても血清尿酸値が低下する事実からも,肥満はインスリン抵抗性を介して高尿酸血症を招来する経路が考えられる5) .特に,内臓脂肪型肥満患者では尿酸産生が亢進しやすいことが知られている.その機序として,内臓脂肪より放出された多量の脂肪酸が肝での脂肪合成を促進し,その際消費されたNADPH+H +の供給経路として五炭糖リン酸経路(pentose cycle)が活性化される機序が注目される(図2).五炭糖リン酸経路の活性化は中間代謝産物であるリボース5リン酸を増加させて,de novoの尿酸合成系亢進につながるのではないかと考えられる.さらに高脂肪酸血症はインスリン抵抗性から高インスリン血症をきたして脂肪合成を亢進させ,やはり五炭糖リン酸経路の活性化から尿酸合成を亢進させる機序も指摘されている.そのほか,インスリン抵抗性は尿pHを低下させて,尿路結石をきたしやすくさせることも示されている6) .その報告によると,尿酸結石の既往を有する患者では既往のない患者に比べてインスリン抵抗性が有意に強く,さらにインスリン抵抗性の強い症例ほど尿pHが低いことが示されている.Current Therapy 2011 Vol.29 No.7 23585