カレントテラピー 29-12 サンプル page 5/42
このページは カレントテラピー 29-12 サンプル の電子ブックに掲載されている5ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
特集分子腫瘍マーカー―治療標的と経過指標として治療標的としての腫瘍マーカー癌に限局して発現する分子を標的とした治療abstract*橋本真一近年,測定技術の向上により癌特異的な分子が捉えられるようになり,この....
特集分子腫瘍マーカー―治療標的と経過指標として治療標的としての腫瘍マーカー癌に限局して発現する分子を標的とした治療abstract*橋本真一近年,測定技術の向上により癌特異的な分子が捉えられるようになり,この分子を標的とする分子標的薬治療が進められている.分子標的薬とは,癌細胞の増殖や腫瘍血管の新生などに重要な役割を担っているさまざまな分子を標的としており,主に小分子化合物と,抗体薬に分類される.腫瘍細胞に特有の細胞表面分子に対して設計された薬剤や,腫瘍細胞において活性化されている細胞内シグナルに対する阻害剤などの分子標的薬が,癌自身の個性に合わせた治療法として期待されている.Ⅰはじめに抗体はポストゲノム研究の主要な創薬分子として注目されていることもあり,多くの抗体医薬の研究開発がなされている(表).これらの抗体はいくつかのタイプに分かれていて,1腫瘍そのものに発現する抗原をターゲットとする場合,2腫瘍に対するホスト免疫応答を強化する抗体,3腫瘍微小環境,例えば腫瘍ストローマで産生される腫瘍化促進因子を削減することによって腫瘍の発達を遅らせる抗体などがある.今回,分子標的薬として多く使用されている抗体医薬品で抗体が腫瘍そのものをターゲットとするものと,最近注目されている未分化リンパ腫リン酸化酵素(anaplastic lymphoma kinase:ALK)阻害剤について紹介する.・癌抗原を標的とした抗体治療1)抗EGFR抗体上皮成長因子受容体(epidermal growth factorreceptor:EGFR)ファミリーのメンバーは,固形腫瘍でしばしば過剰発現しており,その受容体のホモダイマー,ヘテロダイマーによってシグナル伝達を活性化し増殖,分化,浸潤,転移およびアポトーシスを起こす.EGFRは現在使用されている多くの治療薬抗体の標的であり,その抗体はEGFR経路の下流を標的に阻害する.セツキシマブ(アービタックスR)EGFR特異的IgG1モノクローナル抗体は,活性化しているリガンドの結合を抑制することによって,またEGFRによって媒介される最初のシグナル伝達のステップである受容体の二量体化を妨げることによって機能する1).パニツムマブ(ベクティビックスR)は,EGFRに特異的な完全ヒト型化のIgG2アイソタイプ抗体でありセツキシマブと類似の機序によって作用する.しかしセツキシマブとは異なり抗体依存性細胞障害(antibody -dependentcellular cytotoxicity:ADCC)を促進しない.これらの薬剤の両方とも,転移性の結腸直腸癌の処置のためのセカンドラインまたはサードライン治療として使用されている2).EGFRに特異的な抗体であるパニツムマブと対照的に,セツキシマブはたびたびほかの化学療法と組み合わせて使われる.セツキシマブ療法をフォリン酸,5-フルオロウラシルとイリ*東京大学大学院新領域創成科学研究科情報生命科学専攻特任准教授81076