カレントテラピー 29-12 サンプル

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分子腫瘍マーカー―治療標的と経過指標として―エディトリアル分子腫瘍マーカーの考え方は,時代とともに変遷してきた.これまでは,主に腫瘍の存在診断や治療の経過指標,再発診断などに利用されてきた.存在診断に....

分子腫瘍マーカー―治療標的と経過指標として―エディトリアル分子腫瘍マーカーの考え方は,時代とともに変遷してきた.これまでは,主に腫瘍の存在診断や治療の経過指標,再発診断などに利用されてきた.存在診断に関しては,主として血清診断の場合,部位は特定できないので,これを契機として,さらに詳細な診断手技が必要となる.各種画像や内視鏡がこれにあたる.問題点としては,早期診断が困難であること,また,腫瘍マーカーが陰性であることをもって腫瘍がないとはいい切れないことがある,などが挙げられる.とはいえ健康時に,基準値としての自分の分子腫瘍マーカー値を知っておくことは,その後の癌の発生に備える意味は小さくない.次に治療などの経過に伴う判定指標,あるいは,再発診断として用いられる分子腫瘍マーカーである.この点が,実際の臨床では,最もよく活用されている.CTやPETによる被曝や頻回にわたる内視鏡などの検査侵襲も考えると,長期的には,血清を中心とした分子腫瘍マーカーの利用価値は高いといえよう.さらに,遺伝子,あるいはゲノムを用いる分子腫瘍マーカー診断は,新たな展開を示しつつある.乳癌におけるErbB2(HER2)発現の有無による抗体治療,大腸癌におけるK -rasの変異の有無と抗体治療,肺癌におけるALK融合遺伝子の有無によるALK阻害剤の使用など,続々と分子腫瘍マーカーによる治療薬の選択と,その対象患者の絞り込みがなされている.ALKの場合には,阻害剤の有効性がヒストリカルコントロールとの比較ではあるが,全生存期間の延長という形で報告されている(ASCO,2011).最近は,抗癌剤などの副作用の有無,あるいは慢性肝炎から肝癌への移行の可能性について,ゲノム情報からSNPなどで診断される時代を迎えた.新世代シークエンサーにより,10分間,10万円で全ゲノムシークエンスができるようになるといわれており,その時代には,全く新しい分子腫瘍マーカーの出現も含めて,新しい医学の展開さえも期待される.今号では,そのような発展の前夜において,どのような分子腫瘍マーカーが見いだされ,検討されているかも含めて,比較的広い観点から斯界のプロフェッショナルの方に執筆をお願いし,企画者の期待をはるかに超える充実した内容になった.[企画]東京大学医科学研究所附属病院長・教授今井浩三Current Therapy 2011 Vol.29 No.12 71075