カレントテラピー 29-12 サンプル page 29/42
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特集分子腫瘍マーカー―治療標的と経過指標としてKey words分子腫瘍マーカー研究と遺伝子滋賀医科大学医学部腫瘍内科教授/腫瘍センター長醍醐弥太郎ゲノミクス・プロテオミクス研究の進展により,ゲノムワイドな遺伝....
特集分子腫瘍マーカー―治療標的と経過指標としてKey words分子腫瘍マーカー研究と遺伝子滋賀医科大学医学部腫瘍内科教授/腫瘍センター長醍醐弥太郎ゲノミクス・プロテオミクス研究の進展により,ゲノムワイドな遺伝子やタンパク質の量的・質的レベルの変化に基づき発がん機構の全体像をより網羅的に把握することが可能となっている.分子腫瘍マーカーをはじめとするバイオマーカー(病気の診断,治療の選択・効果判定などの指標に用いられる組織,体液中で客観的に測定される生体物質)の探索法とイメージング技術の進歩は,生体における遺伝子・タンパク質の量的・質的変化の体系的な把握を可能にしており,疾患の発生から進行に至る経過を正確に把握する分子病態診断とそれらの情報に基づいて患者ごとに適切な治療法を提供する個別化医療の開発研究を促進すると期待される1)?3).がんの個別化医療を実現するには,各患者の分子病態に基づいた定量的な評価による発症予防(発がんリスク診断)と未病状態・早期がんの検出(がんの存在診断),さらには患者の予後,治療反応性,副作用予測に基づいた適切な集学的治療(手術・化学療法・放射線療法)の選択指標(がんの病態診断)の開発が必要である.2005年3月に米国食品医薬品局(FDA)が新薬の開発と既承認薬におけるファーマコゲノミクス(薬の作用とゲノム情報を結びつけて特定の患者の治療効果,副作用に関連する要因を見いだし各患者に最適の薬剤を使い分ける研究)のデータ提出を推奨するガイダンスを公表し,さらに2007年には新薬の臨床開発コスト削減の切り札として先端的な分子バイオマーカーの探索・開発・応用を提唱したCritical PathOpportunityプログラムを開始し,産学官が一体となったバイオマーカーコンソーシアムの設立を進めてきたことが物語るとおり,がんの診断・治療に応用可能なバイオマーカーはがん克服に向けた最有力の基盤資源と認識されている.2011年7月,FDAは,コンパニオン診断薬の同時開発に関するドラフトガイドラインを策定しているが,実際,医薬品とそのコンパニオン診断薬を同時承認する事例が続いている.したがって,腫瘍の発生機構の解明から,新しい予防,診断,治療法の開発を同時に迅速に進めていく研究および開発戦略と基盤整備がこれまで以上に求められている.次世代シークエンサーや網羅的発現情報解析で得られる膨大な遺伝子・タンパク質情報を迅速に実用化につなげるには,わが国においても臨床応用までの道筋を常に念頭においた開発戦略が求められる.参考文献1)Daigo Y, Nakamura Y:From cancer genomics to thoracic oncology:Discovery of new biomarkers and therapeutic targetsfor lung and esophageal carcinoma. Gen Thorac Cardiovasc Surg 56:43-53, 20082)醍醐弥太郎,中村祐輔:呼吸器内科「遺伝子・蛋白質の網羅的発現情報解析による肺癌の個別化医療の開発」p246-254,科学評論社,東京,20103)醍醐弥太郎,中村祐輔:ゲノミクス解析による肺癌のバイオマーカー探索と臨床移行.特集呼吸器病学TOPICS 2009.分子呼吸器病14:50-53, 2010Current Therapy 2011 Vol.29 No.12 811149