カレントテラピー 29-12 サンプル

カレントテラピー 29-12 サンプル page 27/42

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概要:
的阻害剤TG101348は貧血の改善を誘導せず,逆にJAK2阻害による貧血の増悪を示している.CYT387による貧血改善の作用機序を明らかにしていく必要がある.以上に述べたようにJAK2阻害剤を用いた臨床治験によりその有効....

的阻害剤TG101348は貧血の改善を誘導せず,逆にJAK2阻害による貧血の増悪を示している.CYT387による貧血改善の作用機序を明らかにしていく必要がある.以上に述べたようにJAK2阻害剤を用いた臨床治験によりその有効性と限界が明らかになってきた.これまでのところ1JAK2選択性にかかわらず脾腫や全身症状の改善にきわめて有効である.2JAK2選択的阻害剤とJAK1/JAK2阻害剤でその作用機序に違いのある可能性がある.3JAK2阻害剤は白血球増多や血小板増多の正常化に高い治療効果を示す.4正常JAK2の阻害により貧血や血小板減少といった副作用が出る(オンターゲットの副作用).しかしCYT387はその副作用が低く骨髄線維症の貧血を改善した.5JAK2V617F陽性腫瘍細胞の完全消出には至っていない.6骨髄の線維化の改善は認められない.以上の結果はJAK2の阻害剤が骨髄線維症の治療には不十分で真性赤血球増加症や本態性血小板血症といった骨髄線維症を伴わない疾患に有効である可能性を示唆している.真性赤血球増加症や本態性血小板血症ではJAK2阻害剤以外の有効な治療法が存在することから,Tefferiは2010年の米国血液学会総会でJAK2阻害剤の必要性ならびに安全性を示すための長期にわたる臨床試験の必要性を提唱した19).さらに骨髄線維症に対してJAK2阻害剤以外の治療剤を検索していくことが重要であると述べている19).●Ⅳおわりに―今後の低分子薬臨床治験や前臨床治験の段階において現在さまざまなキナーゼ阻害剤が開発されている.そのいくつかは将来の癌治療に重要な役割を果たすと期待されている.一方でこれまでの分子標的の分類に属しない新たな分子標的の分野が開拓されている.最近注目されている低分子薬にタンパク質-タンパク質結合を阻害する低分子薬Bcl -2/Bcl -XL阻害剤がある20).現在治験中であるこれらの低分子薬は,Bcl-2/Bcl -XL上に存在する複数のアルファヘリックスで形成される疎水性溝に結合し,タンパク質-タンパク質結合の阻害を行っている.この結合を阻害する低分子薬の開発には以前はきわめて否定的な意見が多かったが,これらの薬剤がタンパク質-タンパク質結合も低分子薬の標的となり得ることを示したという意味で大変興味深い.Bcl -2/Bcl -XL上の疎水性溝に似た構造を検索し分子標的としての可能性を調べることで,さらに多くのタンパク質-タンパク質結合を阻害する低分子薬を開発できるかもしれない.近年,腫瘍細胞のゲノム・エピゲノムの解析やマイクロアレイなどを使った遺伝子発現パターンの把握,治療薬を含めたさまざまな刺激に対する腫瘍細胞の応答性のハイスループット解析などの試みが個々の患者について行われるようになってきた21).得られるデータにより患者の腫瘍細胞のタイプが既存の組織学的分類を超えて細分化されてきている.将来的にはこれらのデータは個々の癌細胞における低分子薬に対する感受性や予後の解析,分子標的の検索に利用されて,患者それぞれに細かく対応したオーダーメイド医療もしくは治療薬(personalizedmedicine)の開発に発展していくものと予想される.オーダーメイド医療には患者個々の異常に対する分子標的治療薬が併用されるであろう.一方では,特定の治療薬との併用を当初から考えた薬剤の開発も行われると思われる.今後のこの分野の発展に期待したい.参考文献1)Arora A, Scholar EM:Role of tyrosine kinase inhibitors incancer therapy. J Pharmacol Exp Ther 315:971-979, 20052)Adams J, Kauffman M:Development of the proteasomeinhibitor Velcade(Bortezomib). Cancer Invest 22:304 -311,20043)Monneret C:Histone deacetylase inhibitors for epigenetictherapy of cancer. Anticancer Drugs 18:363-370, 20074)Jordan VC:Tamoxifen:catalyst for the change to targetedtherapy. Eur J Cancer 44:30 -38, 20085)Deininger MW, Druker BJ:Specific targeted therapy ofchronic myelogenous leukemia with imatinib. Pharmacol Rev55:401 -423, 20036)An X, Tiwari AK, Sun Y, et al:BCR -ABL tyrosine kinaseinhibitors in the treatment of Philadelphia chromosome positivechronic myeloid leukemia:a review. Leuk Res 34:1255-1268, 20107)Liu V, White DA, Zakowski MF, et al:Pulmonary toxicityassociated with erlotinib. Chest 132:1042-1044, 2007741142