カレントテラピー 29-12 サンプル

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概要:
特集●分子腫瘍マーカー―治療標的と経過指標として表3 JAK2阻害剤の一覧JAK2阻害JAK1阻害IC50(nM)(倍)Ruxolitinib(INCB018424)JAK3阻害(倍)TYK2阻害(倍)臨床試験4.5 0.6 72 4ⅡTG101348 3 35 332 135Ⅰ/....

特集●分子腫瘍マーカー―治療標的と経過指標として表3 JAK2阻害剤の一覧JAK2阻害JAK1阻害IC50(nM)(倍)Ruxolitinib(INCB018424)JAK3阻害(倍)TYK2阻害(倍)臨床試験4.5 0.6 72 4ⅡTG101348 3 35 332 135Ⅰ/ⅡCYT387 18 0.6 9 1Ⅰ/ⅡSB1518 22 58 24―Ⅰ/ⅡLestaurtinib(CEP701)1―3―Ⅱ特性/薬効JAK1/JAK2阻害剤.投与の早期から脾腫の著明な減少と全身症状の改善を認める.骨髄線維症(MF)患者にみられるサイトカインの異常産生を改善.長期投与によるJAK2V617F陽性細胞の減少が認められる.JAK2の抑制による貧血と血小板減少が認められる.MFでみられる貧血の改善効果は低い.JAK2選択的阻害剤.脾腫の著明な減少と全身症状の改善を認める.MF患者にみられるサイトカインの異常産生を改善する効果は認められない.白血球増多や血小板増多,JAK2V617F陽性細胞の減少の改善に最も高い効果を示す.JAK2の抑制による貧血と血小板減少が認められる.JAK1/JAK2/TYK2阻害剤.脾腫の著明な減少と全身症状の改善を認める.JAK2の抑制による貧血が認められない.代わりに高い貧血の改善効果を認める.この効果はJAK2以外の分子標的の阻害によるものとみられる.JAK2選択的阻害剤.脾腫の減少を認めるが,上記の治験薬と比較するとその効果は低い.MFだけではなくホジキン病,B細胞性リンパ腫,急性骨髄性白血病に対して臨床治験中.JAK阻害剤.FLT3阻害剤として開発された.JAK2とJAK3を強力に阻害するが,JAK1やTYK2に対する選択性は不明.MFに対する治療効果は低い.AZD14800.3515―Ⅰ/ⅡJAK1/JAK2阻害剤.現在臨床治験中.LY2784544――――Ⅰ/ⅡJAK2阻害剤.細胞のレベルでJAK2V617FによるSTAT5のリン酸化を強力に阻害する.選択性に関する詳細は不明.現在臨床治験中.R723 2 370 13>500前臨床試験JAK2選択的阻害剤.JAK1とTYK2に対する選択性がJAK2阻害剤のなかで最も高い.この表ではJAK2阻害剤の生化学試験によって得られたJAK2阻害のIC50(nM)とほかのJAKに対する選択性(倍率)ならびに臨床治験の段階とそれぞれのJAK2阻害剤の特性と薬効を簡単にまとめた.な増殖に最も有効なJAK2阻害剤であるといえよう.しかしTG101348は長期間投与(6?12カ月)によりJAK2V617F陽性腫瘍細胞の著明な減少を示すもののJAK2V617F陽性腫瘍細胞の完全な消失を誘導するには至っていない.この点はほかのJAK2阻害剤でも同様である.最近の報告でJAK2V617F陽性の腫瘍幹細胞の存在が知られている.腫瘍幹細胞は薬剤のトランスポーターを高発現し,かつ薬剤の届きにくいニッチに存在し,細胞休止期にとどまっていると考えられている.さらに腫瘍幹細胞はJAK2V617F以外の生存のシグナルを得ている可能性も考えられる.このような理由でJAK2阻害剤によるJAK2V617F陽性腫瘍細胞の根絶は難しいのかもしれない.これまでのところ骨髄の線維化の正常化にJAK2阻害剤は十分な成果を上げていない.Shideらの選択的なJAK2阻害剤R723を使った動物実験によってJAK2の阻害は早期の骨髄線維化には効果があるが,いったん進行した骨髄線維化に効果が低いことが示されている18).骨髄線維化に対してはJAK2阻害剤の早期からの予防的投与が必要であるのかもしれない.また骨髄線維化の機序のさらなる解明により線維化を改善する新たな分子標的が同定される可能性もある.骨髄線維症に認められる貧血の改善にはJAK1/JAK2/TYK2阻害剤であるCYT387が良好な成績を収めている.CYT387投与患者においてはJAK2阻害による貧血の副作用もほとんど認められていない.一方でJAK1/JAK2阻害剤INCB018424やJAK2選択Current Therapy 2011 Vol.29 No.12 731141