カレントテラピー 29-12 サンプル page 20/42
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特集分子腫瘍マーカー―治療標的と経過指標として低分子治療:低分子治療薬による分子標的の阻害とその選択性-JAK2阻害剤開発の近況*等泰道1・Donald G. Payan*2*3・北村俊雄abstract癌治療で用いられる低分子化....
特集分子腫瘍マーカー―治療標的と経過指標として低分子治療:低分子治療薬による分子標的の阻害とその選択性-JAK2阻害剤開発の近況*等泰道1・Donald G. Payan*2*3・北村俊雄abstract癌治療で用いられる低分子化合物の治療薬(低分子薬)は細胞内で増殖や転移に重要な分子(分子標的)を抑制することで細胞障害性を示す.さまざまな分子標的を阻害する低分子薬が臨床の場で用いられているが,なかでもタンパク質リン酸基転移酵素(キナーゼ)阻害剤は,癌細胞で重要な細胞内のシグナル伝達や制御機構を効率よく阻害することから注目されている.分子標的に対する親和性や選択性が抗癌作用の発揮や副作用の軽減に重要な鍵を握るが,キナーゼ阻害剤ではキナーゼ間で比較的選択性の高いものと低いものが臨床の場でその効果に応じて使い分けられている.近年同定されたフィラデルフィア染色体陰性(Ph?)の骨髄増殖性疾患の原因となるJAK2キナーゼ(JAK2)に対してもさまざまな低分子薬が開発されている.選択性の異なるJAK2阻害剤の臨床治験を通じてPh(?)の骨髄増殖性疾患におけるJAK2の役割について興味ある知見が得られている.●Ⅰ序論近年の分子生物学の急速な進展によって,さまざまな癌細胞における遺伝子の異常とそれに伴う増殖や転移にかかわる細胞内のシグナル伝達や制御機構の異常が明らかになってきた.さらに癌細胞は異常なシグナル伝達や制御機構にその生存を依存していること,それらを阻害することで癌細胞に増殖停止のみならず細胞死を誘導できることもわかってきた.これに伴って癌細胞の増殖や転移に重要なシグナル伝達や制御機構に関与する分子を標的とする分子標的治療薬の開発も進んだ.分子標的治療薬には低分子化合物の治療薬(低分子薬)と抗体製剤の二種類があるが,低分子薬は細胞内で効率よく分子標的の活性を阻害し得るのでさまざまな癌の治療に利用できる.現在,種々の低分子薬が多くの癌に対して使用されている.これまでのところ細胞内のシグナルを抑制するキナーゼ阻害剤,増殖制御に関与するプロテアソーム阻害剤や脱アセチル化酵素阻害剤(米国にて認可),核内ホルモン受容体を標的とする低分子薬などがある1)?4).現在国内で使われている低分子薬を表1にまとめたので参照いただきたい.なかでもAbl遺伝子とBcr遺伝子が融合したBcr -Ablを発現するフィラデルフィア染色体陽性(Ph+)の慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia:CML)の治療薬として登場したイマチニブは,約90%のPh+CMLに寛解を誘導し,多くの患者の社会復帰を可能とした5).またタモキシフェンなどの選択的エストロゲン受容体モディファイアーはエストロゲン受容体陽性の乳癌に高い治療効果を有し*1RigelPharmaceuticals,Inc.VPBiology*2 Rigel Pharmaceuticals, Inc. President of Discovery andResearch*3東京大学医科学研究所先端医療研究センター細胞療法分野教授Current Therapy 2011 Vol.29 No.12 671135