カレントテラピー 29-12 サンプル page 14/42
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特集分子腫瘍マーカー―治療標的と経過指標として代替治療がん特異的な細胞治療の現状*西村孝司1*・脇田大功2*・富樫裕二3*4・北村秀光abstract1991年,ベルギーのテリー・ブーン博士らによるがん抗原の発見によ....
特集分子腫瘍マーカー―治療標的と経過指標として代替治療がん特異的な細胞治療の現状*西村孝司1*・脇田大功2*・富樫裕二3*4・北村秀光abstract1991年,ベルギーのテリー・ブーン博士らによるがん抗原の発見によって,がん免疫治療の開発研究は飛躍的発展を遂げた1).キラーT細胞を標的としたがん抗原ショートぺプチドを用いたがんワクチン治療では,がんの縮小効果は弱いが延命効果は証明された2).世界の動きは,さらにヘルパーT細胞とキラーT細胞の両者を活性化できる次世代ロングぺプチドの時代に突入し,がん患者の生体内でTh1依存的ながん特異的免疫を誘導できるようになった.これと呼応してがん特異的エフェクターの誘導が容易になり,細胞治療もlymphokine-activated killer(LAK)細胞や活性化T細胞などを用いた非特異的免疫療法から,がん特異的エフェクターであるキラーT細胞やヘルパーT細胞を誘導するためのがん特異的免疫細胞治療の時代へと大きな舵が切られている.本稿ではがんの細胞治療のうち,がん特異的免疫誘導を目指した細胞治療について述べる.Ⅰがん免疫療法の歴史的背景われわれの体をウイルスやがんから守る免疫システムに細胞性免疫と体液性免疫が存在するように,がん免疫療法にも1細胞性免疫の賦活に主眼をおいた能動免疫療法と,2抗体を用いた受動免疫療法,が存在する.さらに,1の能動免疫療法は大きく2つの方法に大別される.ひとつは免疫反応を惹起する物質を生体内に投与(接種または摂取)し,体内の細胞性免疫を賦活するもので,免疫アジュバント療法,サイトカイン療法,あるいはがん抗原ワクチン療法がある.また,広義において健康食品もこの範疇に該当すると考えられる.もう一つは,患者から免疫反応を担う末梢血リンパ球などを一度体外に取り出し,試験管内で刺激,活性化さらに増殖させた後に,再び患者の生体内に戻し移入する養子免疫細胞治療がある.30年前に発見されたIL -2で活性化したリンパ球(lymphokine -activated killer:LAK)を用いたLAK療法が代表的な免疫細胞治療である.さらにこれまでNK細胞,NKT細胞,γδT細胞,細胞傷害性T細胞(cytotoxic T lymphocytes:CTL),ヘルパーT(Th)細胞の移入療法などが順次新しい免疫細胞治療として登場してきている(図1).Ⅱがん特異的な細胞治療の現状がんの細胞治療とは,がん細胞を攻撃する機能をもつ免疫細胞(リンパ球)を体外に取り出し,GMPレベルの細胞培養施設(cell processing center:CPC)でサイトカイン,免疫アジュバントを用いる.場合によっては自己がん組織,人工がん抗原タンパク質あるいはぺプチドの存在下で大量に数を増やし,加工・処理することにより高機能を付与したうえで,再びがん患者の体内に戻すがん免疫療*1北海道大学遺伝子病制御研究所疾患制御研究部門免疫制御分野教授*2北海道大学遺伝子病制御研究所疾患制御研究部門免疫制御分野助教*3株式会社バイオイミュランス代表取締役*4北海道大学遺伝子病制御研究所疾患制御研究部門免疫制御分野准教授Current Therapy 2011 Vol.29 No.12 611129