カレントテラピー 29-12 サンプル

カレントテラピー 29-12 サンプル page 12/42

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 29-12 サンプル の電子ブックに掲載されている12ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
特集●分子腫瘍マーカー―治療標的と経過指標として高分化型腺がん低分化型腺がん図2胃がんにおけるdesmocollin 2の免疫染色像進している遺伝子としてクローニングされたものであり,分泌タンパク質RegⅣをコードし....

特集●分子腫瘍マーカー―治療標的と経過指標として高分化型腺がん低分化型腺がん図2胃がんにおけるdesmocollin 2の免疫染色像進している遺伝子としてクローニングされたものであり,分泌タンパク質RegⅣをコードしている.機能としては上皮成長因子受容体(epidermal growthfactor receptor:EGFR)をリン酸化し,Aktを介して転写因子AP -1を活性化し,その標的遺伝子であるsurvivinやMMP -7の発現を誘導する.RegⅣは30%の胃がんに発現しており,腸型形質,神経内分泌の分化と関連している8).胃がん患者の血清中のRegⅣ濃度をELISA法で測定すると,胃がん診断の感度は36%,特異度は99%であり,RegⅣは胃がん診断に適した血清マーカーである9).なお,血清RegⅣは膵がん患者においても検討されており,その有用性が報告されている10).OLFM4は別名hGC -1,GW112とよばれる遺伝子で,骨髄芽球からクローニングされたものである.OLFM4はolfactomedin 4タンパク質をコードするが,その詳細な機能は不明である.近年,ヒト腸の幹細胞のマーカーとして注目されている11),12).olfactomedin4は胃がんの50%に発現しており,高分化型腺がんにおいて高頻度に発現していた.胃がん患者の血清中の濃度をELISA法で測定すると,胃がん診断の感度は31%,特異度は95%であった13).なお,ステージⅠの胃がんでは,血清RegⅣとolfactomedin4を組み合わせて測定すると,感度は52%まで上昇したことから,胃がんの早期発見に有用なマーカーと見なされた.ⅢCAST法を用いた細胞表面タンパク質の同定1 CAST法とはCAST法は,分泌・膜貫通タンパク質を同定する方法として2005年にFergusonらによって開発された14).その概略は,まず分泌に関与するシグナルシークエンスを欠損させたアンピシリン耐性遺伝子(β-ラクタマーゼ遺伝子)を組み込んだベクター(pCASTvector)を準備する.次に,欠損させたシグナルシークエンスの部分に解析対象サンプルのcDNAを組み込みライブラリーを作成する.これらを大腸菌に導入して,アンピシリン含有培地で培養する.ここで選択されてくる大腸菌はアンピシリン耐性株であり,β-ラクタマーゼ遺伝子が分泌,あるいは大腸菌の膜上に存在することを意味している.すなわち,pCASTに組み込まれた遺伝子配列中に膜貫通ドメイン,あるいはシグナルシークエンスが存在することを示している.これらの陽性クローンからプラスミドDNAを抽出し,塩基配列を解析すれば,効率よく細胞表面・分泌タンパク質をコードする遺伝子を同定できる.2胃がんにおけるCAST解析著者らの研究室ではCAST法を用いて,胃がんにおいて発現が亢進している細胞表面タンパク質の同定を行っている.胃がん細胞株MKN - 1およびMKN -28,正常胃粘膜を材料にCAST解析を行い,PCDHB9やTMEM50Bなどの胃がんにおいて発現が亢進している細胞表面タンパク質をコードする遺伝子を同定した15).それらの中でもDSC2遺伝子はCurrent Therapy 2011 Vol.29 No.12 431111