カレントテラピー 29-12 サンプル

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特集分子腫瘍マーカー―治療標的と経過指標として分子腫瘍マーカー研究の最前線網羅的解析から見いだした新規腫瘍マーカー*大上直秀1*・仙谷和弘2*・坂本直也3*・阿南勝宏3*4・安井弥abstract網羅的遺伝子発現....

特集分子腫瘍マーカー―治療標的と経過指標として分子腫瘍マーカー研究の最前線網羅的解析から見いだした新規腫瘍マーカー*大上直秀1*・仙谷和弘2*・坂本直也3*・阿南勝宏3*4・安井弥abstract網羅的遺伝子発現解析から,さまざまな診断マーカー・治療標的が同定されている.著者らの研究室ではSAGE法・CAST法を基盤にし,消化管がん,特に胃がんを材料にがん関連遺伝子の同定を進めている.SAGE法から同定された胃がんに対し特異性の高い遺伝子はREG4,OLFM4,MMP10などで,いずれも胃がん診断における高感度血清腫瘍マーカーである.CAST法から同定されたDSC2遺伝子は細胞間接着分子desmocollin 2をコードしており,胃がんの細胞表面に発現していることから診断マーカー・治療標的として有用である.本稿では,SAGE法・CAST法から同定された消化管がん,前立腺がんの新規診断マーカー・治療標的について概説する.Ⅰはじめにがんは遺伝子発現異常の病気ともいわれ,さまざまな遺伝子の発現に異常をきたしている.DNAマイクロアレイを代表とする各種網羅的遺伝子発現解析から,各種がんにおける遺伝子発現異常が明らかにされてきた.これらのデータはweb上で整理集約され,誰もが使用できるデータとして保存されている.このような環境の下,網羅的遺伝子発現データに基づき主に2種類の研究が行われている.1つは遺伝子発現signatureによる予後予測であり,もう1つは診断マーカー・治療標的の同定である.遺伝子発現signatureによる予後予測については多くの論文が発表されており,臨床応用が期待されている.しかしながら,論文発表後に行われた追試験において,再現性を確認できなかったsignatureも多く,一定の見解が得られていないのが現状である.特に肺非小細胞がんの予後予測のsignatureは論文ごとに異なっており,解析のためのガイドラインも提案されている1).また,診断マーカー・治療標的の同定についても多くの論文が発表されている.網羅的解析から標的候補を抽出し,通常1種類の遺伝子・分子に着目して詳細な解析が行われ,再現性が確認されたものも少なくない.著者らの研究室では消化管がん,前立腺がんを材料にがん関連遺伝子の解析を行っている.網羅的遺伝子発現解析法であるSAGE法・CAST法を基盤にし,図1に示すストラテジーでがん関連遺伝子の同定を進めている2).SAGE法・CAST法の原理については以下に概略するが,いずれもmRNAコピー数の多いものから検出でき,マーカーの検索に優れた方法である.本稿では,SAGE法・CAST法から同定された消化管がん,前立腺がんの新規診断マーカー・治療標的について概説する.ⅡSAGE法1 SAGE法とはSAGE法は,1995年にVelculescuらによって開発された網羅的遺伝子発現解析法である3).その基本*1広島大学大学院医歯薬学総合研究科分子病理学研究室講師*2広島大学大学院医歯薬学総合研究科分子病理学研究室助教*3広島大学大学院医歯薬学総合研究科分子病理学研究室特任助教*4広島大学大学院医歯薬学総合研究科分子病理学研究室教授Current Therapy 2011 Vol.29 No.12 411109