カレントテラピー 29-11サンプル page 9/32
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特集肺癌―パラダイムシフトを迎えた肺癌治療肺癌研究の最前線新しい癌遺伝子EML4-ALKの発見と臨床応用abstract*間野博行われわれは独自の機能スクリーニング手法を開発し,それを用いて肺腺癌臨床検体から新しい融....
特集肺癌―パラダイムシフトを迎えた肺癌治療肺癌研究の最前線新しい癌遺伝子EML4-ALKの発見と臨床応用abstract*間野博行われわれは独自の機能スクリーニング手法を開発し,それを用いて肺腺癌臨床検体から新しい融合型癌遺伝子EML4-ALKを発見した.本来ALKは受容体型チロシンキナーゼをコードするが,染色体転座inv(2)(p21p23)が生じた結果,EML4遺伝子とALK遺伝子が融合し,EML4タンパクのアミノ末端側約半分がALKのキナーゼドメインと融合したタンパクが産生されるのである.EML4-ALKを肺胞上皮特異的に発現するトランスジェニックマウスを作成すると同マウスは生後すぐに両肺に多数の肺腺癌を発症し,しかもこれらマウスにALK活性の特異的阻害薬を投与すると肺腺癌は速やかに消失した.2008年よりcrizotinibをはじめとするさまざまなALK特異的阻害薬の臨床試験が開始され,crizotinibについてはその驚くべき治療効果が公表されている.こうしてわれわれの発見に基づき,EML4-ALK陽性肺癌に全く新しい分子標的治療がもたらされることとなった.Ⅰはじめに肺癌は欧米および日本で癌死数の第一位を占める予後不良の疾患であり,日本だけでも年間6万人以上,また米国でも年間16万人ほどの患者が亡くなっている.肺癌は早期に発見することが困難なため,根治が期待できる外科手術が行える症例はきわめてまれである.しかも旧来の抗癌剤による化学療法では延命効果が少なく,病因に基づいた新しい肺癌の治療法開発が待たれていた.近年,肺癌の一部の症例に上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)遺伝子の活性型変異が生じていることが報告され,しかもEGFR異常を有する症例の一部に対してEGFRのチロシンキナーゼ活性を阻害するゲフィチニブあるいはエルロチニブが有効なことが明らかになった1).こうして肺癌にも分子標的療法の時代が訪れたのである.しかし不思議なことにEGFR変異はアジア人,若年女性,非喫煙者に多く発症しており2),それ以外の症例がどのような活性型癌遺伝子を有しているのかは全く不明であった.そこでわれわれは機能スクリーニング法を用いて,新たな肺癌の原因遺伝子を同定することを目指した.ⅡEML4-ALKの発見―肺癌における初めての融合型癌遺伝子われわれが62歳の喫煙者に生じた肺腺癌検体からcDNA発現ライブラリーを構築し3T3線維芽細胞に導入したところ,2?3週間の培養で形質転換した異常クローン(形質転換フォーカス)が数十種類生じた.そこで,それら異常3T3クローンから挿入cDNAを回収したところ,驚くべきことに,あるcDNAの5’側と3’側は違う遺伝子由来であった.5’側は微小管会合タンパクの一種であるEML4(echinodermmicrotubule -associated protein?like 4)のアミノ*東京大学大学院医学系研究科ゲノム医学講座/自治医科大学ゲノム機能研究部教授Current Therapy 2011 Vol.29 No.11 571029