カレントテラピー 29-11サンプル

カレントテラピー 29-11サンプル page 4/32

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肺癌―パラダイムシフトを迎えた肺癌治療―エディトリアルわが国においては2002年に世界に先駆けて日本でゲフィチニブが承認され,現在ではエルロチニブ,ベバシズマブを加えて3種類の分子標的治療薬が使用可能にな....

肺癌―パラダイムシフトを迎えた肺癌治療―エディトリアルわが国においては2002年に世界に先駆けて日本でゲフィチニブが承認され,現在ではエルロチニブ,ベバシズマブを加えて3種類の分子標的治療薬が使用可能になった.2010年10月に肺癌診療のガイドラインが5年ぶりに改訂された.これを受けて今回の改訂のコンセプトは個別化治療である.従来の進行肺癌を対象とした化学療法は,非小細胞肺癌と小細胞肺癌に分けて治療レジメンが選択されてきたが,2004年のepidermal growth factorreceptor(EGFR)遺伝子変異発見後,患者腫瘍組織の遺伝子プロファイルに応じた治療選択が行われるようになってきた.その契機となったのがIPASS studyである.これはEGFR遺伝子変異の陽性率が高いアジアで行われたゲフィチニブを初回治療として用いた臨床試験で,EGFR遺伝子変異の有無により,ゲフィチニブ,抗癌剤(CBDCA+PAC)の効果が全く異なることを明らかにした.すなわち,EGFR遺伝子変異陽性例はEGFR -tyrosine kinase inhibitor(TKI)が有用であり,陰性例では抗癌剤がより有用であった.また,肺発癌に関与する新しい遺伝子EML4 -ALKの発見も肺癌治療に新しい道を開いたといってよいだろう.腺癌の約5%にEGFR遺伝子変異とは排他的に存在する本遺伝子を標的としたALK阻害剤もグローバルな治験が始まっており,近い将来臨床導入される見込みである.今回のガイドライン改訂のもうひとつの特徴は,非小細胞肺癌のなかでも扁平上皮癌と,非扁平上皮癌で治療選択が異なることを強調した点である.これは2つの薬剤が扁平上皮癌と非扁平上皮癌で効果あるいは毒性が異なったことによる.前者がペメトレキセドであり,本剤はプラチナ併用で投与すると非扁平上皮癌でより効果が高く,非扁平上皮癌で推奨されている.後者はベバシズマブであり,本剤は抗癌剤との併用で使用されるが,扁平上皮癌において毒性が強かったため適応は非小細胞非扁平上皮癌である.また,化学療法の支持療法の進歩も目を見張るものがある.特に最近使用可能になった2つの制吐剤は,化学療法の忍容性のみならず治療成績を向上させた.それを受けて制吐剤の適正使用ガイドラインも最近発刊されている.このように非小細胞非扁平上皮癌(特に腺癌)については治療の劇的な進歩がみられるものの,扁平上皮癌,小細胞肺癌については治療の進歩は乏しく今後の新薬の登場が待たれる.本特集では,パラダイムシフトを迎えた最新の肺癌診断と治療の進歩について第一線で活躍されている先生方に執筆していただいた.本特集でひとりでも多くの若者が肺癌診断と治療に興味をもち,この難治性疾患の治療の進歩の一助となれば幸いである.[企画]順天堂大学医学部呼吸器内科学講座教授高橋和久Current Therapy 2011 Vol.29 No.11 7979