カレントテラピー 29-11サンプル page 26/32
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非小細胞肺癌における維持治療(メンテナンス治療)九州大学大学院医学研究院呼吸器内科分野准教授高山浩一進行期非小細胞肺癌(non -small cell lung cancer:NSCLC)の初回標準治療はプラチナ製剤を含む2剤併用療....
非小細胞肺癌における維持治療(メンテナンス治療)九州大学大学院医学研究院呼吸器内科分野准教授高山浩一進行期非小細胞肺癌(non -small cell lung cancer:NSCLC)の初回標準治療はプラチナ製剤を含む2剤併用療法であるが,4?6コースの治療が終わるとその後は進行(progression disease:PD)まで経過観察の期間に入る.一方,近年注目されている維持治療は初回治療終了後に安定(stable disease:SD)以上の効果が得られていれば無治療期間をおかず,毒性の軽い抗癌剤を継続して投与する方法である.維持治療は使用薬剤によって2つに分類される.初回治療で用いられた薬剤の一部をそのまま継続して使用するcontinuation maintenanceと薬剤を変更するswitch maintenanceである.具体的にはベバシズマブ,ペメトレキセド,エルロチニブなどの薬剤による維持治療のエビデンスが蓄積されつつある.ベバシズマブについてはE4599試験,AVAiL試験の2つの第Ⅲ相試験においてそれぞれ全生存期間(overall survival:OS),無憎悪生存期間(progression-free survival:PFS)の有意な延長が報告された.これらの試験結果を踏まえて,昨年改訂された肺癌診療ガイドラインでは維持治療におけるベバシズマブは推奨グレードAとなっている.ペメトレキセドおよびエルロチニブに関してはそれぞれJMEN試験,SATURN試験とよばれる2つのswitch maintenance試験で有用性が報告されている.ペメトレキセドはさらに本年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)でPARAMOUNT試験の結果が発表され,continuation maintenanceとして投与した場合もPFSを延長することが示された.一般に維持治療に対する批判としてPD後に2次治療として薬剤を投与しても生存延長への寄与は同じではないかという意見がある.特に無治療期間においても,こまめな観察を行っている本邦においてそのような意見は多い.また,毒性の軽い薬剤を使用しているといっても有害事象の発生頻度はプラセボに比べて明らかに高く,QOLを悪化させてしまうおそれもある.反対に初回治療が有効であっても無治療期間に病状が悪化し,有効な薬剤が残っているにもかかわらず2次治療の機会を逸する患者が一部にいるのも事実である.現時点で初回治療後の無治療期間を“Treatment Holiday”と考えるか,それとも病状悪化の“Danger Zone”ととらえて維持治療を導入するかは主治医の判断によるし,患者がどのような生活スタイルを望むかにも大きく依存する.また,初回治療で用いられた薬剤によって維持治療や2次治療で使用する薬剤はある程度規定される.治療オプションが複雑になるにつれ,初回治療を立案する医師には戦略的な視点が今後ますます求められるだろう.Current Therapy 2011 Vol.29 No.11 791051