カレントテラピー 29-11サンプル page 25/32
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特集肺癌―パラダイムシフトを迎えた肺癌治療Key words血管新生阻害剤の適正使用―ベバシズマブを中心に―虎の門病院呼吸器センター内科花田豪郎虎の門病院呼吸器センター内科部長岸一馬血管新生は,腫瘍の増殖や転....
特集肺癌―パラダイムシフトを迎えた肺癌治療Key words血管新生阻害剤の適正使用―ベバシズマブを中心に―虎の門病院呼吸器センター内科花田豪郎虎の門病院呼吸器センター内科部長岸一馬血管新生は,腫瘍の増殖や転移に大きな役割を果たす.ベバシズマブは,血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)に対するヒト化モノクローナル抗体として,VEGFとVEGF受容体との結合を阻害し,血管新生を抑制する.また,腫瘍血管を正常化させることで腫瘍内の間質圧が低下し,抗癌剤の腫瘍細胞へのデリバリーの改善により,化学療法との相乗的効果を発揮することが示唆されている.これまでに扁平上皮癌を除く未治療進行非小細胞肺癌(non -small cell lung cancer:NSCLC)患者を対象として,ベバシズマブの効果を検討する2つの第Ⅲ相試験(E4599試験,AVAiL試験)が実施された.ともにプラチナダブレット+ベバシズマブとプラチナダブレットが比較され,主要評価項目である生存期間(E4599試験)および無増悪生存期間(AVAiL試験)は,いずれもベバシズマブ併用群で有意な改善が認められ,奏効率も優れていた.わが国の肺癌診療ガイドラインでは,進行NSCLCにおけるベバシズマブの位置づけとして,非扁平上皮癌でperformance status(PS)0?1,プラチナ製剤併用療法が施行可能な患者に対して初回治療として推奨されている.投与法はプラチナ製剤と第三世代抗癌剤の併用療法に追加するというもので,プラチナ製剤併用療法の終了後には,病勢増悪または毒性中止までベバシズマブ単剤を継続する.なお,上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性例の初回治療にゲフィチニブが使用された場合の2次治療としても推奨されている.ベバシズマブの安全性について,第Ⅱ相試験(AVF0757g試験)では扁平上皮癌で喀血/肺出血のリスクが高かったため,扁平上皮癌患者は効能・効果外である.また,喀血(2.5mL以上の鮮血の喀出)の既往のある患者は投与禁忌となっており,治療前に明らかな腫瘍内の空洞化がある患者および大血管への癌浸潤のある患者は,慎重に投与の可否を判断する必要がある.欧州を中心とした大規模コホート研究(SAiL試験)では,ベバシズマブに特徴的な有害事象である,出血,高血圧,タンパク尿によるベバシズマブの治療中断/中止の頻度は約2?8%と比較的少なく,副作用はおおむね対処可能であった.なお,わが国では,脳転移例に対するベバシズマブの投与は原則禁忌となっているが,海外の報告(ATLAS試験,PASSPORT試験)によると,脳転移例へのベバシズマブの投与により脳出血の発現率の上昇はみられず,NCCNガイドライン2011では,脳転移既治療例への投与は可能とされている.ベバシズマブ+プラチナ製剤併用療法は,扁平上皮癌を除く進行NSCLCに対する初回治療として標準治療のひとつとなっているが,副作用,有効な薬剤の組み合わせ,投与方法,高齢者への投与,2次治療以降の有効性などの検討課題があるほか,ベバシズマブを含めた分子標的薬全体の問題として医療費の高騰などの課題も存在しており,現在進行中の臨床試験の結果も参考にしながら,日常臨床で適切な患者選択を行う必要がある.781050