カレントテラピー 29-11サンプル page 20/32
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特集肺癌―パラダイムシフトを迎えた肺癌治療EGFR-TKI―肺癌における使い方と今後の展望―*市原英基1*2・木浦勝行abstract上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)遺伝子変異を有する肺非小....
特集肺癌―パラダイムシフトを迎えた肺癌治療EGFR-TKI―肺癌における使い方と今後の展望―*市原英基1*2・木浦勝行abstract上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)遺伝子変異を有する肺非小細胞癌(non-small cell lung cancer:NSCLC)が,EGFRチロシンリン酸化酵素阻害薬(EGFR-TKI)であるゲフィチニブ・エルロチニブに著効するという発見は,固形癌における個別化医療の先駆的役割を果たした.再発・転移性NSCLCの治療は,まずEGFR遺伝子変異の有無を検索することから始まる.EGFR遺伝子変異陽性NSCLCでは,治療経過中のいずれかの時点でEGFR-TKIを使用することが必須と考えられる.臨床研究では,すでにEGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対しEGFR-TKIを超える治療方法の模索が始まった.本稿では,再発・転移性NSCLCにおけるEGFR-TKIの果たす役割およびEGFR-TKIにおける今後の展望について述べていく.●Ⅰはじめに肺癌による死亡は年間6.8万人と全癌死中最多であり,特に肺非小細胞癌(non-small cell lung cancer:NSCLC)は肺癌の約85%を占める.多くは根治困難な進行期の状態で発見されるため,その治療において抗癌剤による化学療法が重要な役割を果たしてきた.1990年代,ドセタキセル,パクリタキセル,ゲムシタビン,イリノテカン,ビノレルビンといった,いわゆる第三世代抗癌剤とよばれる薬剤が相次いで開発され,プラチナ製剤と第三世代抗癌剤の2剤併用療法がNSCLCにおける標準治療とされた.しかし,プラチナ製剤とこれら第三世代抗癌剤をどのように組み合わせても無増悪生存期間6カ月,全生存期間12カ月前後と治療効果は頭打ちであり,NSCLCにおける治療法の開発には閉塞感が漂いつつあった.このようななか,2002年,小分子化合物ゲフィチニブ(イレッサR)が日本で世界に先駆けて承認を受けた.ゲフィチニブは上皮成長因子受容体(epidermalgrowth factor receptor:EGFR)に対するチロシンリン酸化酵素阻害薬(tyrosine kinase inhibitor:TKI)である.これまでの殺細胞性抗癌剤とは全く異なる作用機序を有し,優れた抗腫瘍効果を有しながら,殺細胞性抗癌剤に特有の血液毒性をほとんど認めない薬剤と期待された.しかし,致死的急性肺障害・間質性肺疾患の合併が多く報告され,社会問題になった.さらに,後述するように無作為化比較試験において,プラセボ群との比較で生存期間の有意な延長を示すことができなかった(ISEL試験)1).このため,ゲフィチニブのNSCLCにおける役割は失われる危惧があった.*1岡山大学病院血液・腫瘍・呼吸器・アレルギー内科*2岡山大学病院血液・腫瘍・呼吸器・アレルギー内科教授Current Therapy 2011 Vol.29 No.11 731045