カレントテラピー 29-11サンプル page 15/32
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細胞と異なる抗原をがん細胞が有する必要がある.このがん特異抗原を認識する2つの機序が知られている.1つはいわゆる自然免疫(innate immunity)であり,もともと抗腫瘍活性を示す免疫細胞が存在する1).例えば非....
細胞と異なる抗原をがん細胞が有する必要がある.このがん特異抗原を認識する2つの機序が知られている.1つはいわゆる自然免疫(innate immunity)であり,もともと抗腫瘍活性を示す免疫細胞が存在する1).例えば非小細胞肺癌表面に発現しているMHC classⅠchain -related genes(MICA/B)をnatural killer cell(NK)やT細胞γδ分画(γδT)が認識して細胞傷害活性を示す.もう1つは,獲得免疫(acquired immunity)であり,ウイルス感染細胞を傷害するのと同様,がん細胞に存在する特異的抗原が抗原提示細胞(樹状細胞,DC)によってヘルパーT細胞(Th)や細胞傷害性T細胞(CTL)に抗原提示され,腫瘍特異的な細胞傷害活性を得るというものである2).Ⅲ免疫細胞療法本治療法は,体外でサイトカインなどを加えた培地にて増殖させた免疫細胞を生体内に戻す.免疫細胞療法は1980年ころより米国National Cancer Institute(NCI)外科のRosenbergらが始めた3).免疫細胞はin vitroで腫瘍細胞に接触し傷害するという知見に基づくもので,治療に用いる細胞の培養方法の違いによって,lymphokine -activated killer cell(LAK)療法,cytotoxic T -lymphocyte(CTL)療法,tumor -infiltrating lymphocyte(TIL)療法などに分類される.当初,NCI臨床試験では大量のinterleukin 2(IL-2)を生体に投与してLAK活性を増やす治療を行ったが,その効果は否定的であった4).しかしその後LAKを体外で培養した後に体内に戻す技術の開発とともにさまざまな投与細胞や投与方法が試みられ,今日では成果が得られつつある.体内に戻すエフェクター細胞として,LAK,γδT,NKT,NKなどが臨床研究で用いられている.患者末梢血からアフェレーシスなどにて単核球成分を採取し,これを適切な条件で培養した後に体内に戻す方法である.γδTはT細胞αβ分画(αβT)と比べるとV領域のレパートリーは少なく,またγとδ鎖の組み合わせには一定の法則があり多様性は制限されている.γδTはレパートリーごとに特定の臓器に存在するのが特徴であり,末梢血中にはVγ2Vδ9分画が過半数を占めている.幼少時より末梢血中のVγ2Vδ9の多くはmemory cellであり,発生早期から繰り返し刺激されていることが示唆される5).γδTはheat shock protein(HSP)などのストレス抗原に反応して活性化する.HSPの刺激でMICA/Bが発現し,これをγδTが認識する.MICA/Bは感染細胞やがん細胞でも過剰発現している.特に非小細胞肺癌の多くで乳癌,腎癌,卵巣癌,前立腺癌,結腸癌と同様にMICA/Bが過剰発現されている.Vγ2Vδ9表面にはNK細胞と同様にNKG2Dが発現し,これのリガンドとしてMICA/Bを認識する6).またMICA/Bを発現する細胞表面のリン酸化抗原を認識する.特にがん細胞においては,コレステロール代謝経路の中間産物であるisopentenylpyrophosphate(IPP)を,TCR/CD3のリガンドとして認識する7).がん細胞にVγ2Vδ9が標的と認識して接着すると,CD8+αβTと同様にclonalexpansionが起こり,標的細胞を傷害する(図1).Vγ2Vδ9のclonal expansionは細胞接触刺激だけでなく,ゾレドロン酸を加えた培養液内で起こることが示された8).ゾレドロン酸はカルシウムイオンのキレーターであるビスホスホネートの1種であり,腫瘍浸潤転移による溶骨が原因である高カルシウム血症を治療する薬剤として開発された.ゾレドロン酸はコレステロール代謝においてfarnesyl pyrophosphatesynthaseを阻害し,上流のIPPを蓄積させるが,これがVγ2Vδ9による腫瘍細胞の認識を助け,免疫活性化をうながす可能性がある.非ホジキンリンパ腫や多発性骨髄腫患者らにγδT細胞療法を行い有効性が報告されているが,著者らは自己γδTを用いた肺がん再発例に対する免疫療法臨床試験を施行した9).対象は非小細胞肺癌術後再発例,化学療法・分子標的治療後再増悪例で,通常の治療に抵抗性の患者である.患者末梢血のγδTを体外で増殖活性化させ,2週間ごとに計6回以上1×10 9個を目標にγδTを点滴投与した.完全寛解(CR)+部分寛解(PR)+安定(SD)の割合を病勢コントロール率とすると,投与5回目では50%,後観察期間では30%であり,また試験期間中,本治療が直接引き起こしたと思われる有害事象はみられ681040