カレントテラピー 29-11サンプル page 12/32
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AATP結合阻害薬結合C1156Y L1196MON OFF ON ONB図3二次変異によるALK阻害薬耐性メカニズムA:ALK酵素活性領域の三次構造を模式的に示す.ATP結合ポケットにATP(緑色図形)が挿入されると酵素活性はオンになるが,阻....
AATP結合阻害薬結合C1156Y L1196MON OFF ON ONB図3二次変異によるALK阻害薬耐性メカニズムA:ALK酵素活性領域の三次構造を模式的に示す.ATP結合ポケットにATP(緑色図形)が挿入されると酵素活性はオンになるが,阻害薬(青色図形)が挿入されると酵素活性はキャンセルされる.B:C1156YあるいはL1196M変異が生じるとATP結合ポケットの変形が生じ,阻害薬が結合できず耐性が生じると予想される.癌内でcrizotinibに耐性となる2種類の細胞クローンが独立に進化を遂げたことになる.さらに本症例の治療には用いられなかった別のALK阻害薬にも両変異は耐性であることも確認され,今回発見された変異はALK阻害薬に対するユニバーサルな耐性獲得機構であると考えられた.ALKの酵素活性領域の三次構造は,アデノシン三リン酸(ATP)結合ポケットを挟む2種類の球形の領域からなる(図3A).ATPが結合すると酵素活性はオンになり細胞の無限増殖が誘導される.しかしそのATP結合ポケットに競合阻害する形でcrizotinibが結合すると酵素活性がキャンセルされて,癌の細胞死が誘導される.C1156はATP結合ポケットの上端に位置しており,そこにアミノ酸置換が生じると結合ポケットの形が変化してcrizotinibが結合できなくなるのではないかと思われる(図3B).一方L1196はATP結合ポケットの最も奥に位置しており,この部位に大きな側鎖をもつアミノ酸が挿入されるとやはりcrizotinibが結合できず阻害薬耐性になると予想される(図3B).興味深いことに,このL1196部位は,BCR -ABLがイマチニブに耐性になる原因変異部位T790やEGFRがゲフィチニブに耐性になる原因変異部位T315と全く同じ位置であった10).したがってこのgatekeeper部位は,キナーゼの共通の耐性獲得部位であると考えられる.Ⅵおわりに2007年の論文報告からわずか数年でALK阻害薬による第Ⅲ相試験が行われる状況になり,日本ではすでに三社のALK阻害薬試験が並行して走っている.われわれがALK肺がん研究会(ALCAS)を独自に立ち上げ,わが国のEML4-ALK陽性患者を救うべくボランティア活動を開始したのはわずか1年半前であるが,すでに隔世の感がある.今後さらにほかの製薬会社からもALK阻害薬の臨床試験が開始されると予想されており,やがては次々と薬剤として認可・販売されるものが出てくると期待している.参考文献1)Lynch TJ, Bell DW, Sordella R, et al:Activating mutationsin the epidermal growth factor receptor underlying responsivenessof non-small-cell lung cancer to gefitinib. N Engl JMed 350:2129-2139, 20042)Shigematsu H, Lin L, Takahashi T, et al:Clinical and biologicalfeatures associated with epidermal growth factor receptorgene mutations in lung cancers. J Natl Cancer Inst 97:339 -346, 20053)Soda M, Choi YL, Enomoto M, et al:Identification of thetransforming EML4-ALK fusion gene in non -small-cell lungcancer. Nature 448:561 -566, 20074)Druker BJ, Talpaz M, Resta DJ, et al:Efficacy and safety ofa specific inhibitor of the BCR -ABL tyrosine kinase in chronicmyeloid leukemia. N Engl J Med 344:1031-1037, 20015)Soda M, Takada S, Takeuchi K, et al:A mouse model forEML4-ALK -positive lung cancer. Proc Natl Acad Sci U S A105:19893 -19897, 20086)Bang Y, Kwak EL, Shaw AT, et al:Clinical activity of theoral ALK inhibitor PF -02341066 in ALK -positive patientswith non -small cell lung cancer(NSCLC). J Clin Oncol 28:18s(suppl;abstr 13), 20107)Kwak EL, Bang YJ, Camidge DR, et al:Anaplastic lymphomakinase inhibition in non -small-cell lung cancer. N Engl JMed 363:1693 -1703, 20108)Kobayashi S, Boggon TJ, Dayaram T, et al:EGFR mutationand resistance of non -small-cell lung cancer to gefitinib. NEngl J Med 352:786-792, 2005601032