カレントテラピー 29-10 サンプル page 9/32
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概要:
Ⅱレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)RAA系には,主に循環動態に作用する全身RAA系と心臓局所に作用する組織RAA系がある.全身RAA系の主な作用としては,アンジオテンシンⅡを経てアルドステロン....
Ⅱレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)RAA系には,主に循環動態に作用する全身RAA系と心臓局所に作用する組織RAA系がある.全身RAA系の主な作用としては,アンジオテンシンⅡを経てアルドステロンを分泌し,血圧を維持するとともに,腎でのナトリウム再吸収や水分貯留などが挙げられる.心不全急性増悪期には,まず心拍出量が低下して腎血流量が減少し,全身RAA系が活性化され,アンジオテンシンⅡやアルドステロンが過剰に産生される.アンジオテンシンⅡの過剰産生は末梢血管抵抗を増大させ,アルドステロンは腎でのナトリウム貯留,マグネシウムやカリウム喪失を惹起する作用のほか,交感神経亢進,圧受容器の機能異常などを引き起こす.一方,組織RAA系は心でのアンジオテンシンⅡの発現を亢進させ,心肥大や心筋の線維化を促進し,心室のリモデリングに深く関与する.心不全急性増悪期から慢性心不全代償期に移行する際に全身RAA系はいったん沈静化するが,その後組織RAA系が活性化され,心室のリモデリングが進行する(図1)4).その結果,慢性心不全は非代償期に移行し,心拍出量の低下や血圧低下から交感神経系が活性化される.さらに交感神経系は全身RAA系を活性化する.全身RAA系のバイオマーカーとしては,血漿レニン活性とRAA系の最終産物である血中アルドステロン濃度で評価することができる.一方,組織RAA系に関しては,心局所でのレニンやアルドステロンの産生について議論が多いところであるが,局所で産生されたアンジオテンシンⅡは直接またはETを介してANPやBNPの遺伝子発現を亢進させる.したがって,BNPの産生部位がほぼ100%心臓であることを考慮すると,心臓局所のRAA系の活性化は血中BNP濃度から推測することができる.Ⅲ交感神経系心不全では,心拍出量が低下し,腎血流量が低下することによりRAA系が賦活化される.これによりさらに末梢血管は収縮し,うっ血や末梢循環不全RAA系活性化の程度健常状態急性心不全組織RAA系全身RAA系代償期心不全を増悪させる.これらの血行動態の変化は交感神経を活性化させ,末梢血管収縮や後負荷の増大を生じる.また,肺や腎にうっ血が生じるとノルエピネフリンのクリアランスは低下し,結果的に血中ノルエピネフリンが増加する.このような交感神経の亢進は,急性心不全のときには重要な代償機転として働くが,亢進状態が慢性化すると心臓への負荷は増大し,不整脈の誘発や心筋障害をきたし,心機能を悪化させる.Cohnらは,慢性心不全患者で,血漿ノルエピネフリン濃度を測定し,その血中濃度が高値である患者の予後が悪化し,生命予後の指標になることを報告した5).さらにV -HeftⅡ試験で,血漿ノルエピネフリン濃度の増加が抑制されると心不全患者の長期予後が改善することを報告した6).その後,CIBISⅡ7)やCOPERNICUS 8)などの大規模臨床試験のように,β遮断薬が心不全患者の予後を改善することを実証した臨床試験の結果が数多く報告されるようになった.血漿ノルエピネフリン濃度は全身の交感神経活性のひとつの指標であり,心不全の重症度や予後予測因子として有用である.また,MIBGシンチは心臓交感神経活性の評価指標として利用され,心不全の予後予測や治療効果判定に有用である.Ⅳナトリウム利尿ペプチド非代償期心不全図1心不全病期とRAA系の活性化〔参考文献4)より引用改変〕1ナトリウム利尿ペプチドの概要ナトリウム利尿ペプチドファミリーはANP,BNP,およびC型ナトリウム利尿ペプチド(C-typenatriuretic peptide:CNP)から構成される.ANPCurrent Therapy 2011 Vol.29 No.10 9889