カレントテラピー 29-10 サンプル

カレントテラピー 29-10 サンプル page 7/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 29-10 サンプル の電子ブックに掲載されている7ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
心不全の診断と治療―病態の解明から治療法のエビデンスまで―エディトリアル本号では「心不全」をテーマとして取り上げました.人口の高齢化と生活習慣の欧米化によって日本人の疾病構造は癌とともに,心不全がます....

心不全の診断と治療―病態の解明から治療法のエビデンスまで―エディトリアル本号では「心不全」をテーマとして取り上げました.人口の高齢化と生活習慣の欧米化によって日本人の疾病構造は癌とともに,心不全がますます重要になっています.心不全患者は,地球規模でも非常に高い罹患率,発症率を示しており,その予防・治療法の開発は焦眉の課題となっています.心不全の原因としてのリウマチ性弁膜症は大幅に減少し,一方,冠動脈疾患や心肥大による左室スティッフネスの増加に伴う心不全,大動脈弁の石灰化による大動脈弁狭窄症,糖尿病や脂質異常症などの危険因子が集積することによる虚血性心筋症や糖尿病性心不全などの発症リスクが増加しています.病態生理の解明が進み,心不全は,ポンプ失調だけでなく,「全身の神経・体液性因子の異常」というコンセプトが確立しています.また,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)阻害薬とβ遮断薬の有効性が,数々の大規模臨床試験によって明らかにされてきました.最近では,軽症患者に対する抗アルドステロン薬エプレレノンの効果を評価するEplerenone in Mild Patients Hospitalization And Survival Study in HeartFailure(EMPHASIS-HF)によって,軽症の心不全患者におけるエプレレノンの有効性,安全性が示されました.また,新規機序による降圧剤である直接的レニン阻害薬(directrenin inhibitor:DRI)アリスキレンは,糖尿病性腎症や心肥大の抑制効果をもっていることが報告され,今後,心不全治療薬としても期待されています.さらに2010年,ivabradine(選択的洞房結節If電流阻害剤)が,心拍数を低下させることにより,心拍数が上昇している慢性心不全患者の転帰を改善するというSHIFT試験の報告もLancetに掲載されました.また,バソプレシンV2受容体拮抗薬トルバプタンも発売され,慢性心不全患者のうっ血や浮腫の管理が向上しています.非薬物療法も著しく進歩しています.また,心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy:CRT)のレスポンダーの予測における心エコーの役割についても多くの議論がなされています.このように話題が豊富ななか,本号では,急性心不全,慢性心不全の治療と診断について,この領域のエキスパートの先生方にご執筆をお願いいたしました.本号が,心不全診療のup -to -dateを知るうえで有用な情報としてご活用いただければ大変に幸甚です.[企画]群馬大学大学院医学系研究科臓器病態内科学教授倉林正彦Current Therapy 2011 Vol.29 No.10 7887