カレントテラピー 29-10 サンプル

カレントテラピー 29-10 サンプル page 25/32

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中性脂肪蓄積心筋血管症大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学助教/厚生労働省難治性疾患克服研究事業中性脂肪平野賢一蓄積心筋血管症研究班班長中性脂肪蓄積心筋血管症(triglyceride deposit cardiomyovasculopa....

中性脂肪蓄積心筋血管症大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学助教/厚生労働省難治性疾患克服研究事業中性脂肪平野賢一蓄積心筋血管症研究班班長中性脂肪蓄積心筋血管症(triglyceride deposit cardiomyovasculopathy:TGCV)は,2008年,わが国の心臓移植待機症例より見いだされた新規疾患単位であり,心筋細胞,冠状動脈硬化巣に中性脂肪が蓄積する結果,重症心不全,不整脈をきたす難病である1).これまでのところ明らかなTGCVの原因遺伝子は,細胞内中性脂肪分解の必須酵素であるadipose triglyceride lipase(ATGL)である.2009年より,厚生労働省難治性疾患克服研究事業として,TGCV研究班が立ち上がり,本症の1日も早い克服を目指して,その疾患概念の確立,診断法,治療法の開発が進められている.正常心ではエネルギー源となる長鎖脂肪酸を,本症では細胞内で代謝できず,中性脂肪として心血管に蓄積してしまう,いわば,心臓の肥満である2).組織におけるトリグリセリド(triglyceride:TG)含量と血漿TG値が必ずしも相関しない特徴がある.TGCV研究班の活動の結果,原発性TGCVであるATGL欠損症は,疑診例を含めわが国で9例,海外で16例が見いだされた.ATGL欠損症は,2007年に,Fischerらによりmild myopathyとして報告されたこともあり,特に神経内科学領域からの報告が多い.心筋症の合併が報告されているのは,疑診例を含めて25例中16例.男女に分けると,男性で11例中11例.女性で14例中5例であり,男性では,心病変が必発のようである.心筋症の形態として,男性は拡張型心筋症,女性は肥大型心筋症を呈する傾向にあり,鑑別診断として重要である.末梢血の多核白血球の空胞化(Jordans’奇形とよぶ)は,心症状,骨格筋症状の発現以前から全例に認められ,診断的価値が高いと考えられる.わが国の症例では,9例全例に心病変が確認されており,その診断時の平均年齢は34歳である.5例はすでに心臓死,2例は心臓移植を受けており,特に,わが国の症例では,心症状が重く,突然死する症例が多いと考えられる.TGCV研究班では,診断基準(案)を作成し,国内外からの情報をさらに収集する予定である.また,大阪大学医学部附属病院において,患者さんに今すぐに適応できる治療法として,特異的栄養療法を開発し,倫理委員会の承認を得て,自主研究を行っている.参考文献1)Hirano K, Ikeda Y, Zaima N, et al:Triglyceride deposit cardiomyovasculopathy. N Engl J Med 359:2396-2398, 20082)Hirano K:A novel clinical entity:triglyceride deposit cardiomyovasculopathy. J Atheroscler Thromb 16:702-705, 200978958