カレントテラピー 29-10 サンプル page 24/32
このページは カレントテラピー 29-10 サンプル の電子ブックに掲載されている24ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
心臓移植の体制整備大阪大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管外科学教授澤芳樹大阪大学大学院医学系研究科重症臓器不全治療学教授福嶌教偉心臓移植を実施するには,心臓血管外科の施設としての体制整備はもちろ....
心臓移植の体制整備大阪大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管外科学教授澤芳樹大阪大学大学院医学系研究科重症臓器不全治療学教授福嶌教偉心臓移植を実施するには,心臓血管外科の施設としての体制整備はもちろんのこと,手術以外の体制整備を行うことが重要である.まずは,病院として,脳死臓器移植を実施することが倫理委員会で承認されていることが大前提である.そのうえで,移植待機中の管理体制として,心臓血管外科・循環器外科病棟の整備,補助人工心臓(ventricular assist support:VAS)の管理体制が重要である.医師のみならず,看護師,レシピエントコーディネーター,臨床工学技士(medical engineer:ME)が,心臓移植・VAS治療を熟知していることが重要である.またいつ死亡するかもしれない待機患者の心のケアをする体制も重要で,臨床心理士,社会福祉士などとの連携が必要である.小児では,小児ケア専門家と連携する.わが国の心臓移植待機期間はきわめて長く,VASの有無にかかわらず,長期にわたって入院管理できる体制整備が必要である.また,2011年4月から埋め込み型VASが認可されたので,VASの在宅管理を行う体制も整備しなければならない.ドナーはいつ現れるかわからないので,24時間体制の連絡網を整備し,いつでも心臓採取チームと移植チームを構成できるだけのマンパワーを維持することも必要である.術後の集中治療室のキャパシティーの問題を解消し,緊急手術への麻酔科・MEの連携がとれるようにもしておかないといけない.心臓移植後は,拒絶反応を予防・治療するための免疫抑制療法や,感染症の予防・診断・治療などの知識が重要で,病院として院内感染対策,移植後感染症対策を日頃から行っておくことは重要である.また,いつでも拒絶反応が診断できるように,超音波検査,心臓カテーテル検査,心筋生検が常時行える体制を整備したうえで,生検標本の作成と診断が必要に応じてできるようにしておく.心臓移植によって心不全が改善するので,患者は病気が治ったと錯覚するが,あくまでも他人の心臓をもらっただけなので,厳重な管理が必要である.医療者だけでなく,患者本人,家族にも心臓移植についてよく知ってもらい,日常生活のさまざまな自己管理を徹底してもらうことが大切である.その意味で,レシピエントコーディネーターは心臓移植には欠かせない職種である.医師とレシピエントコーディネーターが連携しながら,患者,家族,その周辺の人(学校の先生や同僚)などと綿密な連絡をとれる体制を構築することが,移植後のQOLと予後を良くするには必須である.以上のように,心臓移植を実施するには,多岐にわたった医療者が連携する体制をとることが必要である.心臓移植は,多くの医療者の綿密な連携により一人の患者を救う医療であるが,その結果として瀕死の患者がほぼ正常の生活を送れる素晴らしい医療である.Current Therapy 2011 Vol.29 No.10 77957