カレントテラピー 29-10 サンプル

カレントテラピー 29-10 サンプル page 20/32

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特集●心不全の診断と治療―病態の解明から治療法のエビデンスまで免疫吸着カラム血漿分離膜filter血漿分離膜:プラズマフローOP R免疫吸着カラム:イムソーバTR R図2重症心不全に対する免疫吸着療法れるようになっ....

特集●心不全の診断と治療―病態の解明から治療法のエビデンスまで免疫吸着カラム血漿分離膜filter血漿分離膜:プラズマフローOP R免疫吸着カラム:イムソーバTR R図2重症心不全に対する免疫吸着療法れるようになった.その後の精力的な研究により,心筋細胞膜上のFcγ受容体Ⅱaと結合することで陰性変力作用を発揮する「心抑制性抗心筋自己抗体」がその中心的な治療標的であることが明らかにされた9),10).β1-AR,M2ムスカリン受容体,ミオシン,トロポニンIなどに対する自己抗体は「心抑制性抗心筋自己抗体」に含まれ,この「心抑制性抗心筋自己抗体」はIgGサブクラス3に属している.Babaらはこの「心抑制性抗心筋自己抗体」の簡便なスクリーニング検査法を報告し11),治療前の評価や効果予測,効果判定などへの応用が期待されている.Ⅴ本邦および当施設での免疫吸着療法プロトコールと効果本邦でまとめられた本治療に関する最初の成績は,Nagatomoらによる抗β1-AR抗体,抗M2ムスカリン受容体抗体のいずれかが陽性の16例に関する報告である12).吸着のペースは安全性が確認できてからは週3回,計3?5回としている.治療により血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide:BNP)の改善,6分間歩行距離の改善,LVEFの改善が認められた.当院でのプロトコールはNYHA心機能分類Ⅲ-Ⅳ度かつLVEFが35%以下のDCM患者を対象とし,抗心筋自己抗体の有無は問わないこととしている.吸着カラムとして,本邦での使用実績が長く安全性が高いという点,IgGサブクラス3の吸着性が高いことが明らかにされている点から,当院でもNagatomoらの施設同様トリプトファンカラム(イムソーバTR R)を用いている.吸着は一回の血漿処理量2,000mL,週2回,計5回行った(図2).当院では現在まで7例に本治療を行い,高度の低血圧・低心拍出・肺うっ血〔およびペースメーカや植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator:ICD)植込み術後状態〕患者においても有害事象なく治療可能であった.本治療により抗β1受容体抗体価や,抗β1-AR抗体などの抗心筋自己抗体を多く含むとされるIgG3分画の有意な減少効果が示された.7例中3例はNYHA心機能分類Ⅲ度からⅡ度への心不全症状の改善効果が認められたが,4例の自覚症状は不変であった.諸検査指標の解析においてはLVEF(前22.8±6.2,後29.1±9.1%,p<0.05),心拍出係数(前1.71±0.40,後1.97±0.41L/分/m 2,p<0.05)の早期改善効果が認められた(図3).また,IAによる自己抗体吸着以外の効果の関与について調べるため,免疫吸着前後でd -ROM testにて酸化ストレスレベルを測定したところ,有意な改善が認められた.この酸化ストレスレベルは,LVEF(r=?0.601,p=0.02)および肺動脈楔入圧(r=0.668,p<0.02)と良好な相関を示した.また,当院での治療では血中TNF -αにおいても有意に低下した(前1.41±0.81,後0.17±0.45μg/dL,p<0.01).使用する吸着カラム(イムソーバTR R)にはTNF -αの吸着効率がよいとの報告があり13),本治療による急性期の心不全改善効果には,自己抗体吸着による主作用のほかにも,酸化ストレスやサイトカインへの直接的,間接的な効果が関与Current Therapy 2011 Vol.29 No.10 67947