カレントテラピー 29-10 サンプル

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心筋に関連する自己抗体・抗β1受容体抗体・抗ミオシン抗体・抗ムスカリン抗体・抗ラミニン抗体・抗ミトコンドリア抗体・抗カルシウムチャネル抗体・抗Na/K ATPase抗体・抗トロポニンI抗体自己免疫遺伝的素因拡張型....

心筋に関連する自己抗体・抗β1受容体抗体・抗ミオシン抗体・抗ムスカリン抗体・抗ラミニン抗体・抗ミトコンドリア抗体・抗カルシウムチャネル抗体・抗Na/K ATPase抗体・抗トロポニンI抗体自己免疫遺伝的素因拡張型心筋症ウイルス感染図1拡張型心筋症の主要な病因と自己抗体自己抗体除去の目的で行う血液浄化療法には血漿を取り除き新たな血漿を補充する血漿交換(plasmaexchange:PE),血漿分離後に行う選択的吸着療法〔免疫吸着療法(immunoadsorption:IA)〕,分離した血漿をセカンドフィルターにかけることで,分子量の大きな免疫グロブリンなどを廃棄しアルブミンを回収する二重濾過血漿交換療法(double filtrationplasmapheresis:DFPP)がある.Ⅲ拡張型心筋症に対する免疫吸着療法DCMに対する血液浄化療法として,IAによる心不全改善効果が1996年,Wallukatらにより初めて報告された1).本治療によりβ1アドレナリン受容体に対する自己抗体(抗β1-AR抗体)の低下とともに,自覚症状と心機能の改善を認めた.Dorffelら2)は1997年にDCM患者に対しIAを5日間続けて行い,心拍出係数の増加や肺血管抵抗の低下など,血行動態に対する急性効果を報告した.Felixら3)はNYHA心機能分類Ⅲ,Ⅳ度で左室駆出率(left ventricularejection fraction:LVEF)<30%のDCMに対して,第1クールは3回,後の3クールはそれぞれ2回ずつの吸着を行い,早期の血行動態の改善と3カ月後のLVEFの改善を報告している.17例のDCMを対象とした12カ月間の観察結果がMullerらにより報告されているが4),治療群では非治療群に比べて左室拡張末期径,収縮末期径,LVEFは3カ月後から12カ月後にかけて改善し,抗β1-AR抗体価は12カ月間持続的に低下していた.長期の評価として,抗β1-AR抗体陽性例を対象に5日間連続の吸着を1セットのみ行った9例を3年間経過観察した結果では4例に心事故(突然死,心不全死,心移植)を認めたが,心事故を認めなかった5例では3年後もLVEFの改善は維持され,抗β1-AR抗体価も低値であった5).現在に至るまで,主にドイツで300例以上のDCM患者に本治療が行われ,その効果が報告されている.このような報告を受け,2006年からは本邦でも当院や慶應義塾大学病院,北里大学北里研究所病院などで日本人の重症心不全患者を対象としてIAの安全性および有効性を評価する試みが開始されるようになった.Ⅳ血液浄化療法の標的自己抗体標的自己抗体の研究では,初期段階でラットにβ1受容体を免疫すると15カ月でDCM様病態が惹起され,この血清を正常ラットにトランスファーしDCM6様病態を再現できたとの報告)がある.また家兔に免疫すると,拡張障害を主体とした心肥大モデルが惹起され,β1受容体数の減少が認められるとの報告などから7),抗β1-AR抗体の除去が本療法の機序に最も大きく関係していると想定されていた.しかし,Mobiniら8)は抗β1 -AR抗体が陽性の症例と陰性の症例で,IAの効果に差がみられないことを報告するなど,単独の抗原における自己抗体のみに注目していたのでは,IAの効果は説明困難と考えら66946