カレントテラピー 29-10 サンプル page 18/32
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特集心不全の診断と治療―病態の解明から治療法のエビデンスまで代替療法重症心不全に対する血液浄化療法*笠井宏樹1*2・池田宇一abstract拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy:DCM)の終末像は薬物治療抵抗性の....
特集心不全の診断と治療―病態の解明から治療法のエビデンスまで代替療法重症心不全に対する血液浄化療法*笠井宏樹1*2・池田宇一abstract拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy:DCM)の終末像は薬物治療抵抗性の心不全であり,高度な日常活動制限を余儀なくされている患者は決して少なくない.重症心不全に対する血液浄化療法の特色は薬物治療抵抗性の難治性心不全患者に対し,新規薬物による心不全治療法を確立することが目的ではない.重要なのは免疫学的な観点から,心不全増悪に関与しうる自己抗体を除去するという非薬物的なアプローチによる心不全治療を行う点にある.本稿では自験例を踏まえつつ,心不全領域における血液浄化療法の現在までの進歩と今後の課題について報告する.Ⅰはじめに拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy:DCM)は,左室または両心室の拡張と収縮不全を特徴とする心筋疾患であり,多くは進行性に経過する.DCMの病因は多因子によると考えられ,ウイルス感染,遺伝子異常,自己免疫異常がそのなかでも主要な要因であるとされている.近年,心不全診療において,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),抗アルドステロン薬などのレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系阻害薬ならびにβ遮断薬療法はその予後を改善させ,心臓再同期療法や補助人工心臓などの非薬物療法も格段の進歩を遂げてきている.しかしながらこれらの治療,管理をもってしても,心不全への進行を十分に抑えることはしばしば困難であり,重度の心不全に陥ると最終的には心臓移植しか方法がない.2010年に改正臓器移植法が施行され,心臓移植件数もそれに伴い増加傾向を示してはいるが,依然これら重症心不全患者のうち,ごく限られた症例にしか行われていないのが現状である.特に本邦ではDCMをはじめとする心筋症が相対的に多く,このような患者に対する新たな治療方法の開発が望まれている.Ⅱ拡張型心筋症と自己免疫異常DCM患者の85%になんらかの抗心筋自己抗体が検出され,これらの自己抗体の少なくとも一部は慢性心不全の病態の増悪因子になることが明らかにされている.心不全の進行に関与する抗体として心筋収縮タンパク,細胞内シグナル伝達に関与するタンパク,交感神経受容体,ミトコンドリアタンパクなど,数多く報告されている(図1).このような抗心筋自己抗体が存在するときに対する免疫学的なアプローチとして,副腎皮質ステロイドや免疫グロブリン投与などがある.しかしそれら薬物による治療に対し,心筋の収縮や心不全の進行に関与しうる自己抗体をより直接的に除去する方法として血液浄化療法(アフェレーシス治療)がある.*1信州大学大学院医学系研究科循環器病態学助教*2信州大学大学院医学系研究科循環器病態学教授Current Therapy 2011 Vol.29 No.10 65945