カレントテラピー 29-10 サンプル page 13/32
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特集心不全の診断と治療―病態の解明から治療法のエビデンスまで心不全の非薬物治療心臓再同期療法*安藤献児abstract心不全の患者では心室内伝導障害(intraventricular conduction disturbance:IVCD)をもつ症例....
特集心不全の診断と治療―病態の解明から治療法のエビデンスまで心不全の非薬物治療心臓再同期療法*安藤献児abstract心不全の患者では心室内伝導障害(intraventricular conduction disturbance:IVCD)をもつ症例が多く存在し,IVCDは予後悪化の予測因子である.心臓再同期療法(cardiac resynchronizationtherapy:CRT)とは,右心房・右心室・左心室側壁にペーシングリードを留置し,左心室中隔壁と左心室側壁を同時にペーシングを行うことでIVCDを改善する治療方法である.CRTの適応は,十分な薬物療法にもかかわらずNYHA機能分類Ⅲ?Ⅳ度のなかから重度の心不全症状を有する低心機能患者〔左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)35%以下〕で,心電図上QRS幅120?130msec以上の症例が対象である.CRTにより,1生命予後の改善,2心不全再入院の減少,3心不全症状の改善,4運動耐容能の改善,5左室リバースリモデリング,6LVEFの増加,7僧帽弁逆流の減少,8BNP値の減少,が起こる.また近年の大規模臨床試験の結果は,NYHA機能分類Ⅰ?Ⅱ度の軽症心不全症例へのCRTによる適応拡大の有効性を示している.Ⅰ心不全と心室内伝導障害・心臓再同期療法の効果さまざまな基礎疾患(虚血性心疾患,拡張型心筋症など)により,心臓のポンプ機能が低下する心不全の患者では心室内伝導障害(intraventricular conductiondisturbance:IVCD)が多く存在することが疫学調査にて明らかになっており1)?4),IVCDのある心不全患者の予後の悪化も報告されている3),4).IVCD(特に左脚ブロック)があると,右脚を伝わった電気興奮が右心室側から先に心筋を収縮させて,左心室の側壁側は遅れて収縮する.その結果,IVCDは以下のような影響を血行動態に与える.1心室中隔壁運動の異常,2左室拡張期充満時間の短縮,3左室dP/dtの低下・脈圧の低下,4僧帽弁逆流時間の延長,5左室駆出率(left ventricular ejection5)?8fraction:LVEF)・心拍出量の低下),が起こる.これらの現象によって心不全が増悪する.心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy:CRT)とは,右心房・右心室・左心室側壁にペーシングリードを留置し,左心室中隔壁と左心室側壁を同時にペーシングを行うことでIVCDを改善する治療方法である.左心室側壁には冠静脈を介してペーシングリードを挿入する(図1).この治療方法によって前述したIVCDの悪影響が改善される.そのため心不全も改善すると考えられている.ⅡCRT治療に関する臨床試験・適応前述のように,CRTは心不全がありIVCDをもつ患者に対して効果があると考えられるが,現在までに多くの臨床試験が行われている.そのほとんどの臨床試験においてCRTの有効性が証明されている(表).*社会保険小倉記念病院循環器科部長40920