カレントテラピー 29-10 サンプル

カレントテラピー 29-10 サンプル page 10/32

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概要:
は主として心房で,BNPは主として心室で合成される循環ホルモンである.ANPは心房の伸展刺激により,BNPは主として心室の負荷により分泌が亢進し,血中濃度が上昇する.一方でCNPは主に中枢神経系や血管内皮細胞に存....

は主として心房で,BNPは主として心室で合成される循環ホルモンである.ANPは心房の伸展刺激により,BNPは主として心室の負荷により分泌が亢進し,血中濃度が上昇する.一方でCNPは主に中枢神経系や血管内皮細胞に存在し,局所因子として作用している.ANPは主に心房で合成され,心房筋の伸展刺激により血中に分泌されるため,血中ANP濃度は循環血液量の指標となる.さらに心不全の重症度が増すと心室からの分泌が増加する.BNPは主として心室で生合成され,合成されたものがconstitutiveに分泌される.心室筋への負荷が増大すると心室筋でのBNP合成が増加し,その結果分泌量も増加する.血中ANP,BNP濃度は,心臓での発現量に大まかに比例して増減し,また心不全の重症度に比例して増加する.健常人では,血中BNP濃度は血中ANP濃度よりも低値を示すが,心不全が重症になると血中ANP濃度に比して血中BNP濃度の増加が著明になる.血中BNP濃度は,左室拡張末期圧と正の相関を示し,左室駆出率と負の相関を示す9).一方,血中ANP濃度もこれらのパラメータと相関を示すが,血中BNP濃度のほうがより強い相関を示す.つまり血中BNP濃度は,左室機能の評価,左心不全の重症度の評価に有用な生化学的マーカーであると考えられる.2 BNPの臨床応用前述のように,血中BNP濃度の測定は,心不全の存在診断,重症度診断,治療経過判定,予後診断に最も有効な生化学的マーカーである.Maiselらは呼吸困難で救急受診した患者に対して,問診,身体所見,X線,および血中BNP濃度などから心不全の判定を行ったが,そのなかで血中BNP濃度が最も鋭敏に心不全を診断できたと報告している10).また,New York Heart Association(NYHA)心機能重症度分類に平行して血中BNP濃度は上昇し,BNP値が高いほど心不全は重症であった.Tsutamotoらは,NYHAⅡ度以上,左室駆出率45%未満の心不全患者の血中BNP濃度を測定し,BNP高値な群で生命予後が悪化すると報告した11).以降,Val -Heft試験などの大規模臨床試験でも,血中BNP濃度高値が心不全患者の生命予後を悪化させることが確認されている.わが国ではBNPの血中濃度が主に臨床的に測定されているが,近年,BNP前駆体のNT -proBNPの測定系も利用可能となっている.心不全の診断・予後診断についてはBNPとほぼ同等の結果が報告されているが,BNPとNT -proBNPを使い分ける際には注意が必要である.BNPにはホルモン活性があり,半減期が約20分と短い.一方で,NT -proBNPには生理活性がなく,半減期が60?120分と長いことから血清での測定が可能である.BNPとNT -proBNPのどちらが有効であるか,という点に関してはいまだ結論は出ていないが,大まかにいって両者とも有用である.ただし,BNPとNT -proBNPの代謝を考慮すると,心不全の予後の指標としてはわずかにNT -proBNPのほうが有効であるとの報告が散見されている.Ⅴその他の体液性因子1エンドセリンETは強力でかつ持続的な血管平滑筋収縮作用をもつペプチドホルモンで,ET -1,ET -2,ET -3の3種類のサブタイプからなるETファミリーである13).ET受容体には,ET-A受容体とET-B受容体がある.循環系に働く作用としては,ET -A受容体が血管平滑筋に発現し,リガンドとして主にET -1が結合し,血管収縮に働く.一方,血管内皮細胞で,ET -B受容体が発現してNOの放出に関与する.ET -B受容体はET -1,ET -2,ET -3のいずれもが同等の親和性をもつリガンドとして結合する14).血管平滑筋にもET -B受容体は発現して収縮に関与するとされている.心不全では,重症度に比例して血中ET -1濃度は上昇するが15),特にNYHAⅣ度の重症心不全で高値を示す.ET受容体拮抗薬が慢性心不全の予後改善に有効か検討されたが,現時点ではその有効性は認められていない.2バソプレシンバソプレシンは抗利尿ホルモンともいわれるように,脳下垂体後葉から分泌されるホルモンで,バソプレシンV2受容体を介して集合管における水再吸10890