カレントテラピー 35-8 サンプル

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72 Current Therapy 2017 Vol.35 No.8786促進するアコチアミド1錠を毎食前に投与する.漢方薬では,六君子湯より強力な胃運動促進作用を有する茯苓飲が有効な場合が多く,自律神経調整作用のある補中益気湯と併用するとより効果的である.定番処方は(補中益気湯+茯苓飲)×3回毎食前,である.3 口内炎,味覚障害肺がん患者は低栄養状態にあるため,抗がん剤により口内炎をきたしやすい.口腔粘膜修復作用のあるレバミピド1日分300mgを水100mLに溶かして少しずつ口に含み,よくうがいして飲むことをくり返すと,多くの患者は数日で口内炎が改善する.好中球の遊走を阻害するコルヒチンが有効な場合もある.真菌感染を伴う場合にはゲル状の抗真菌薬を併用し,潰瘍形成など組織欠損のある場合は,組織修復に有用なL - グルタミンを補充するためにL - グルタミン顆粒またはマーズレンR Sを4~6g程度投与する.レバミピドが無効の場合の次の一手は,漢方薬であり,黄連を含む半夏瀉心湯や甘草瀉心湯を用いる.エキス製剤では,(半夏瀉心湯+甘草湯)または(半夏瀉心湯+桔梗湯)を少量の水に溶かし,よくうがいをして吐き出す.抗がん剤による味覚障害の原因として亜鉛欠乏は重要である.亜鉛は舌の味蕾の味細胞に多量に含まれ,味の感知に重要な役割を果たしている.血清亜鉛値(基準値80~130μg/dL)をモニターしながら,1日量30~60mgを,市販の亜鉛サプリメントか亜鉛含有胃粘膜保護薬のポラプレジンクで補充する.4 末梢神経障害肺がんに用いられる抗がん剤のうち,タキサン系(パクリタキセル,ドセタキセル,アブラキサンR など),プラチナ系(シスプラチン,オキサリプラチンなど),ビンカアルカロイド系(ビノレルビンなど)の抗がん剤により手足のしびれや麻痺を主訴とする末梢神経障害(薬物起因性多発ニューロパシー)が起こる.これらの抗がん剤を投与中に牛車腎気丸を併用すると,神経障害がある程度予防される8).しかし,いったん完成した神経障害を軽快させるのは通常困難である.また,近年本症に頻用されるプレガバリンは,効果は弱く意識障害や転倒などの副作用が問題となるので,一律に投与すべきではない.漢方医学的には神経障害と冷えが深く関係することから,牛車腎気丸に熱薬の「附子末」を適量加えると,症状が軽快する患者が多い.また芍薬甘草附子湯を併用すると時に著効を示すことがある.定番処方は,(牛車腎気丸+附子末)×3回,あるいは(牛車腎気丸+芍薬甘草湯+附子末)×3回,であり,附子末は1回量0.5gで開始し,2.0g程度まで漸増して至適量を決める.しかし,本病態に対して確実に著効を示すのは,「電気温鍼器」による鍼治療である(図1~3).当院開院以来現在までの1カ月間にこの方法で鍼治療を行った本症患者30名の8割以上で,1回の治療後にしびれの強さが治療前の半分以下に改善した.実際の熱電球消灯時熱電球点灯時図1 背部兪穴群の温補に用いる電気温鍼器