カレントテラピー 35-8 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.8 69783Ⅰ はじめに肺がんの化学療法は近年急速に進歩し,その生存率は格段に向上している.しかしさまざまな抗がん剤による副作用や後遺症は,患者の生活の質(QOL)を低下させ,治療の完遂を妨げる.したがって副作用や後遺症の予防や治療は喫緊の重大課題であるが,実際にはそれらの領域にはみるべき進歩がない.本稿では,筆者ががん研有明病院で13年半の間に3,000人あまりのがん患者を診療するなかで開発した,抗がん剤による副作用や後遺症を「漢方薬+α」で緩和する方法を解説する.本稿で述べる治療法の多くは,未だランダム化比較試験(RCT)でその有用性が証明されておらず,試案というべきものであるが,筆者は患者のQOL改善に役立つものと確信している.なおそれらの詳細と症例については,文献1)~5)をご参照いただきたい.また,現在までに行われたがんに対する漢方薬の研究については,Amitaniらの総説にまとめられている6).Ⅱ 肺がんに頻用される抗がん剤の副作用と後遺症現在,肺がんに頻用される抗がん剤には,プラチナ製剤(シスプラチン,カルボプラチン),植物アルカロイド(パクリタキセル,ドセタキセル,ビノレルビン,イリノテカン,エトポシド),代謝拮抗剤(ゲムシタビン,ペメトレキセド),抗がん性抗生物質(アムルビシン),分子標的薬(ゲフィチニブ,エルロチニブ,ベバシズマブ,クリゾチニブ),免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ)などがある.*1 空海記念統合医療クリニック院長・腫瘍内科*2 空海記念統合医療クリニック副院長・腫瘍内科*3 空海記念統合医療クリニック鍼灸治療室長・鍼灸師肺がん─個別化医療の時代漢方薬による肺がん治療薬の副作用軽減星野惠津夫*1・静 貴生*2・関 龍圓*3肺がんの化学療法は近年急速に進歩し,用いられる抗がん剤は,プラチナ製剤,植物アルカロイド,代謝拮抗剤,抗がん性抗生物質,分子標的薬,免疫チェックポイント阻害薬など,多彩となった.そのためそれらによる副作用や後遺症もまた多彩であり,それぞれに対する的確な対処が必要である.本稿では,近代西洋医学とは全く異なるシステムである漢方医学+αを駆使して,それらを緩和する方策を解説する.まず,肺がん治療における漢方薬の必要性を述べ,次に肺がん患者の呈する基本的病態とその定番処方を,「癌がん証しょう」を改善する補剤,「腎じん虚きょ」を改善する補腎剤,「?お血けつ」を改善する駆く?お血けつ剤ざい,「冷え」を改善する附ぶ子し末に分けて解説する.さらに,肺がん患者の個別症状に対する漢方治療として,全身倦怠・気力体力の低下,食欲不振・体重減少,口内炎・味覚障害,末梢神経障害,分子標的薬による皮膚障害,しゃっくりなどについて,その漢方治療の定番処方を示す.そして漢方薬よりも治療効果の大きな新薬がある場合は,合わせて解説する.