カレントテラピー 35-6 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.6 87Key words589脳機能イメージング東京都リハビリテーション病院リハビリテーション科医長 新藤恵一郎脳機能イメージングとは,脳の機能を測定し,画像化することで,脳の各部位がどのような機能を担っているかを推測する技術である.脳機能イメージングは,測定する対象によって大きく2つに分けられ,①脳血流動態:機能的MRI(functional MRI:fMRI),近赤外分光分析法(near infrared spectroscopy:NIRS)やポジトロン断層法(positron emission tomography:PET),②神経電気活動:脳波(electroencephalogram:EEG)や脳磁図(magnetoencephalography:MEG)がある.脳のある部位で神経活動が起こると,代謝が増加し,その結果,脳血流が増加する.このように,神経活動と血液循環には,時間的・空間的な緊密な関係があり,“Neurovascular coupling”と呼ぶ.脳血流動態を測定した場合は,これに基づいて,神経活動の変化を予測する.各測定法には,空間分解能,時間分解能の点から,長所,短所がある.例えば,機能的MRIは,空間分解能はミリメートル単位で優れているが,時間分解能は秒単位と劣っている.一方,脳波は,空間分解能はセンチメートル単位で,脳深部まで測定できないが,時間分解能はミリ秒単位と優れている.そのため,空間分解能と時間分解能を補完するために,2種類の脳機能イメージングを同時に測定する研究も試みられている.近年,脳は,解剖学的に離れ,特化した領域を組織化し,認知,運動や感覚のような機能を担うネットワークを形成していることが明らかになってきた.何も行動していない,アイドリング状態にある脳においても,ネットワーク(default mode network)が存在することが提唱された.安静時fMRIを用いれば,例えば,一次運動野は運動課題を行っていない時にも,低頻度(0.1Hz未満)で脳血流量は変動し,その脳血流量は,対側一次運動野,対側小脳,両側一次感覚野,運動前野,および補足運動野と時間的に相関している.このような相関を,機能的結合(functional connectivity)と呼び,機能的に関連のある領域間でみられる.脳卒中後に起こる機能的結合の変化は注目されている.例えば,脳卒中後の運動麻痺は,損傷半球運動野と非損傷半球運動野との間の機能的結合の大きさと相関すると報告されている.さらには,脳卒中急性期における損傷半球運動野と非損傷半球視床,補足運動野および中前頭回との機能的結合が,6カ月後の麻痺側上肢機能と相関するという報告もある.このように,脳機能イメージングは,脳機能の解明だけではなく,障害との関連,予後予測にも用いられるようになってきており,今後のさらなる研究が期待される.