カレントテラピー 35-6 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.6 19521Ⅰ はじめに脳卒中片麻痺患者の上肢機能障害の問題として,機能障害の回復がいわゆる日常生活に必要とされる上肢機能の回復になかなか結びつかない点が挙げられる.回復期リハビリテーション病院に入院となった脳卒中片麻痺患者446例で実際に上肢機能がどれくらい良くなり,どれくらいの人が実際の生活のなかで麻痺手を使えるようになるのかを調べた結果では,日常生活で使用できる実用手を獲得するのは,入院患者の36~38%であった1).入院時のStroke Impairment Assessment Set(SIAS)finger function scoreが3以上のいわゆる手指の分離運動が可能な患者では,退院時にその90%以上は麻痺側でページをめくる,コップを口までもっていく等が可能な実用的な機能を獲得していたが,2以下の分離運動が困難な患者ではその実用性の獲得の可能性は低いのが現状である.すなわち通常のリハビリテーションにより,分離運動が出現している患者では適切なリハビリテーションにより実用的な手の機能の獲得が可能であるが,分離運動が出現していない例では通常のリハビリテーションによる麻痺手の実用性の獲得が非常に限られているのが現状である.現在,新しい治療法が出現しており,従来に比べてより一層の機能改善が見込まれるようになっている.『脳卒中治療ガイドライン2015』の上肢機能障害に対するリハビリテーション2)の抜粋を表に示す.麻痺が軽度な例に対しては,麻痺側上肢を抑制し,生活のなかで麻痺側上肢を強制使用させるconstraintinducedmovement therapy(CIMT)が勧められている.また中等度の麻痺筋(手関節背屈筋,手指伸筋)に対しては電気刺激が勧められている.運動障害に対するリハビリテーションにおいて重要なポイントとして①量依存性(dose dependent),②課題依存性(task specificity),③神経可塑性(neuralplasticity)がある.つまり,治療の効果はdose dependentであり,訓練の内容によってその効果にはtask specificityがある.また中枢神経障害における真の運動機能回復を目指すためには可塑的変化が誘導されなければならな* 順天堂大学大学院医学研究科リハビリテーション医学教授脳卒中リハビリテーションの最近の動向─ 障害に対する新たなアプローチ上肢機能障害に対するリハビリテーション藤原俊之*脳卒中片麻痺上肢機能障害に対するアプローチは,能力低下の代償が強調されていた.しかし,近年上肢機能障害に対するさまざまなアプローチが報告され,その有効性も示されている.本稿では近年報告されている上肢機能障害へのアプローチを概説するとともにわれわれが開発したhybrid assistive neuromuscular dynamic stimulation(HANDS)therapyならびにBrainMachine Interfaceを用いた上肢機能障害に対するリハビリテーションを紹介する.