カレントテラピー 35-2 サンプル

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カレントテラピー 35-2 サンプル

Current Therapy 2017 Vol.35 No.2 9107で,自己抗原に対する応答は起こらないように,生体防御と免疫寛容のバランスを保っている.T細胞上に発現する共刺激分子と共抑制分子は,免疫応答のバランス制御に重要な役割を果たしている.T細胞の活性化には,抗原刺激(第1のシグナル)に加えて,共刺激(第2のシグナル)が必要となる.第2のシグナルは,抗原提示細胞上のB7分子(CD80/B7-1およびCD86 /B7-2)がリガンドとしてT細胞上のCD28に結合することで伝達される.この第2のシグナルが欠如すると,T細胞は抗原に対して不応答となる(T細胞アナジー).近年,B 7 /CD 28ファミリーに属する新規分子が次々と同定されている.CD28ファミリー分子には,T細胞活性化を促進するもの(共刺激分子)と抑制するもの(共抑制分子)があり,前者にはCD28やICOSなど,後者にはCTLA-4やPD-1が含まれる.CTLA-4やPD-1などの共抑制分子は「免疫チェックポイント」として機能し,自己への不適切な免疫応答や過剰な炎症反応を抑制して,生体を組織傷害から守る重要な役割を担っている.Ⅲ CTLA-4による免疫抑制CTLA-4はT細胞活性化初期(activation phase)に働く免疫チェックポイント分子で,主にリンパ組織における抗原提示を制御する.CTLA - 4遺伝子は1987年にGolsteinらによって単離された2).Linsleyらは1991年にCD28のリガンドであるB 7-1(CD80)およびB7-2(CD86)がCTLA -4にも結合することを発見した3).当初,CTLA-4は活性化受容体と考えられたが,1994年にBluestoneらのグループが,次いで1995年にAllisonらのグループが,CD28はT細胞を活性化するのに対してCTLA -4は抑制することを示した4),5).CTLA -4は,B7-1およびB7-2に対してCD28よりも高い親和性で結合する.CTLA -4の細胞室領域にはimmunoreceptor tyrosine inhibitory motif(ITIM)が存在し,CTLA-4に生理的リガンド(B7-1およびB7-2)が結合すると,ITIMがリン酸化され,脱リン酸化酵素SHP1およびSHP2が会合し,T細胞の活性化を抑制する.近年,CTLA -4発現細胞は近傍細胞上に発現するB7-1やB7-2と結合してトランス- エンドサイトーシスにより細胞質内に取り込むことによって,CD28を介した共刺激を阻止する可能性が示唆されている6).CTLA -4による強力な免疫抑制作用は,Makらより作成されたCTLA -4欠損マウスによって明らかとなった7).CTLA - 4欠損マウスはT細胞が全身の臓器に浸潤して,移植片対宿主病(graft-versus-hostdisease:GVHD)様の症状を起こして若年齢で死亡する.1996年にAllisonらは動物モデルでCTLA-4阻害による抗腫瘍効果を明らかにした8).しかしながら,免疫原性の低い腫瘍モデルでは,CTLA -4抗体単剤では抗腫瘍効果がみられなかった9).Ⅳ PD-1による免疫抑制PD-1はT細胞活性化後期(effector phase)に働く免疫チェックポイント分子で,主に炎症局所でキラーT細胞が標的細胞を攻撃する場面で作用する.PD -1遺伝子は1992年に京都大学の本庶研究室においてクローニングされ10),同グループによって機能が明らかにされた.PD -1はCD28ファミリーに属する免疫抑制受容体で,活性化T細胞に発現してT細胞の増殖とエフェクター機能(サイトカイン産生,細胞傷害活性など)を抑制する11).PD -1による免疫抑制作用はPD -1欠損マウスにより明らかとなった12),13).PD -1欠損マウスは遺伝的背景により多彩な自己免疫疾患を発症するが,その自己免疫症状は,CTLA -4欠損マウスに比べて,遅発性で比較的軽症である.PD -1欠損マウスは,C57BL/6背景ではSLE様の糸球体腎炎や関節炎を,BALB/c背景では自己抗体の沈着を伴う拡張型心筋症を,NOD背景ではⅠ型糖尿病を発症する.これらの結果からPD -1は自己免疫寛容に重要な役割を果たすことが示唆された.PD -1は,免疫応答の比較的遅い時期にエフェクターT細胞や記憶T細胞に発現し,慢性刺激で“疲弊した”T細胞上にも発現がみられる.PD -1の発現制