カレントテラピー 35-2 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.2 7105がん免疫療法の最新動向― 免疫チェックポイント阻害剤の将来展望―企画慶應義塾大学医学部先端医科学研究所細胞情報研究部門教授河上 裕長年,期待されていたがん抗原特異的T細胞を主要エフェクターとするがん免疫療法が,最近,免疫チェックポイント阻害療法(PD -1/PD -L1/CTLA4阻害抗体)と培養がん抗原特異的T細胞(腫瘍浸潤T細胞,TCR/CAR遺伝子導入T細胞)を用いる養子免疫療法として開発され,さまざまながんの臨床試験で明確な治療効果が示されるとともに,すでに複数のがん種で承認され,今後も適応拡大が期待されている.従来,免疫療法は,再発予防や延命効果ぐらいは期待できるのはと言われながら,第Ⅲ相臨床試験で有意差を示すことができないことをくり返してきた.しかし,最新のがん免疫療法では,他の治療が効かない進行がんに対しても持続する腫瘍縮小・延命効果が得られることが判明し,その臨床での位置づけは一変した.『Science』誌はCancer immunotherapyを2013年度Breakthrough of the Yearに選び,今,世界中で,アカデミアと企業で免疫療法の開発が進められ,がん治療開発の方向性も変わりつつある.一方,PD -1/PD -L1阻害療法の奏効率は10~30%程度であり,治療前や早期に治療効果を予測して適切な症例を選択したり,治療中に治療継続の必要性を判定できるバイオマーカーの同定が期待されている.またチェックポイント阻害は,患者が十分に抗腫瘍T細胞を保持する場合は可能であるが,そうでない場合は,高親和性受容体をもつ人工的な遺伝子改変T細胞の利用なども必要になるので,そのためのバイオマーカーも必要である.致死的な自己免疫性有害事象も起こり得るので,患者さんのために,また医療経済的にも無駄な治療をしないことが重要である.さらに効果が期待できない状態を効くように変えることも含めて,免疫療法の治療効果を増強することが求められており,単純に機序の異なるがん治療の併用だけでなく,抗腫瘍T細胞応答の重要調節ポイントの制御法を組み合わせる複合がん免疫療法の開発が期待されている.すなわち,免疫療法においても,precision medicine, personalized therapyが必須であり,新規診断・治療標的の同定が期待される.そのためには,ヒトのがん免疫病態のさらなる解明が必要であり,がん患者ネットワークの構築による適切な臨床試験の実施と評価,さらに臨床検体を用いた多層オミクス解析と体系的な免疫解析の融合研究が重要である.米国では国立がん研究所(NCI)主導のCancer Moonshot Initiativeなどが開始されており,日本でも産官学連携体制の再構築による基礎・臨床研究の促進が重要である.本特集では,基礎から臨床まで,エキスパートにより,免疫療法の最新動向を紹介していただく.エディトリアル