カレントテラピー 35-2 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.2 77治療薬解説175広範な免疫抑制機構に起因しているものと思われる.2 抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体programmed cell death- 1(PD- 1)は,リガンドであるPD-L1(programmed cell death- 1 ligand- 1,B 7-H1)やPD -L 2(B 7-DC)との相互作用によりT細胞の活性化を抑制する.PD -L1/PD -L2との結合によりPD - 1の細胞質ドメインにSHP - 2が誘導されることでTCRシグナルが阻害され,T細胞活性化が抑制される.抗PD - 1抗体あるいは抗PD -L1抗体は,以下の2つの相でT細胞を活性化し,抗腫瘍免疫応答を増強している.1)T細胞がAPCからの抗原提示により活性化される際の抑制シグナルをブロックし,エフェクターT細胞を効率よく活性化させる(プライミング相).2)がん細胞はPD -L1などの抑制性補助刺激分子のリガンドを発現することでT細胞の活性化を抑制し,抗腫瘍免疫応答から逃避している.がん局所におけるがん細胞上のPD -L1とT細胞上のPD -1との相互作用を阻害することで抗腫瘍免疫応答の抑制を解除し,T細胞の再活性化を促す(エフェクター相)(図2).2016年12月現在,本邦で承認されている抗PD -1抗体薬としてはニボルマブとpembrolizumabがある.他にも臨床試験中のものが複数あり(表),適応拡大も含めて今後さらに増えていくものと予想される.一方,リガンド側をブロックする抗PD -L1抗体薬は本邦では未承認であるが,米国では2016年5月に進行尿路上皮癌,2016年10月に進行非小細胞性肺癌に対して承認されている.尿路上皮癌への承認の根拠となったIMvigor 210試験では,プラチナ製剤による治療歴を有する進行・転移性尿路上皮癌患者310人を対象とした単群試験で,奏効率は14.8%,奏効期間は2.1~13.8カ月という成績であった.本試験では免疫組織化学染色により腫瘍浸潤免疫細胞のPD -L1の発現率でもサブグループ解析を実施しており,PD -L1発現が5%以上の群(100人)に限ると奏効率は26.0%と約2倍であった.しかし,PD-L1発現が5%未満であっても9.5%で奏効が認められており,PD -L1の発現のみではバイオマーカーで不十分であることがうかがえた9).PD -L1に対する分子標的薬であるにもかかわらず,臨床効果がPD -L1の発現に依存しない患者が存在する点は大変興味深く,免疫系を標的としたがん治療の複雑さを示しているものと思われる.加えて,抗PD -L1抗体にはADCC活性によりPD -L1発現がん細胞を直接傷害する可能性もあり10),ADCC活性をもつ抗体ともたない抗体での臨床効果の違いも今後の検討課題である.Ⅱ 免疫系に作用している分子標的薬免疫チェックポイント阻害剤が優れた臨床成績をあげたことで,抗腫瘍免疫応答によるがんの制御が注目されている.これまで直接的な殺腫瘍作用を中心に考えられてきた抗腫瘍製剤が,免疫の働きによりがんを制御している可能性も新たに考えられている.これまで本邦で承認されている分子標的薬のうち,約半数はキナーゼ阻害薬である.Bcr -Abl(チロシンキナーゼ)の阻害薬として開発されたイマチニブやダサチニブは,かねてから免疫における作用が多く報告されており11),予後との相関も明らかになっている.PI3K経路やMAPK経路を標的とした分子標的薬も免疫細胞に対する作用が検討されている12)~14).ここでは,細胞表面抗原であるCCR4を標的とした分子標的薬について,現在進められている免疫的な機能解析について述べる.1 抗CCR4抗体ケモカイン受容体のひとつC-C chemokine receptor4(CCR4)は,成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)細胞で高発現していることから,ADCC活性によるATLL細胞の除去を目的としてCCR4を標的とした抗体製剤(モガムリズマブ)が開発された.抗CCR4抗体を用いた臨床試験では,ATLLに対して劇的な奏効率が認められたため,ATLLに臨床応用され,現在は末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)および皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)に対しても保険承認されている.ATLL細胞は多くがCD3陽性,CD4陽性の細胞で,半数以上でCD25および転写因子FoxP3を発現している15).FoxP3はTregのマスター調節因子であることから,ATLL細胞の一部はTregに類似していると言える.実際,FoxP3+ATLL細胞では強い免疫抑制