カレントテラピー 35-2 サンプル

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50 Current Therapy 2017 Vol.35 No.2148および新規ワクチン療法との併用など興味深い併用療法などが開始されている(表2).Atezolizumab(ヒト化抗PD -L1IgG抗体)は,2016年に抗PD -L1抗体としては初めて米国食品医薬品局(FDA)で薬事承認(適応:膀胱がん)されたが,現在,卵巣がんに対しては抗CTLA - 4抗体や抗VEGF阻害薬ベバシズマブと非ステロイド性抗炎症薬との併用療法などの探索的試験が検討されている(表2).Ⅳ 今後の展望と課題1 有効例のバイオマーカー探索いよいよ卵巣がんに対しても,複数の免疫チェックポイント阻害薬が試行されるようになりその治療効果が検証されつつある.しかしながら,押し並べてそれらの奏効率は6~20%と決して高いとはいえない.そこで今後卵巣がんでPD -1経路阻害薬の臨床応用がさらに発展する鍵のひとつは,有効例や無効例を予測できるようなバイオマーカーの同定である.これまでに,有効例を予測するマーカー候補として,がん細胞側のPD -L1発現からインターフェロン(IFN)-γやT細胞の関連遺伝子群(遺伝子シグネチャー)の発現,そして腫瘍の遺伝子変異の数や特定の遺伝子変異などが指摘されている.また無効のマーカーとして,βカテニン遺伝子シグネチャーなども報告されている.さらにがん細胞の遺伝子異常の数が有効性に関与するとの報告も出てきている(図4).すなわち,がん細胞の遺伝子異常が多い腫瘍は,生体内にない新たな変異タンパクが発現すると,免疫細胞はこの新規抗原を新たな異物として認識し免疫反応が起こるが,そこで分泌されるIFN -γなどによってPD -L1が発現し,PD -1経路を介した免疫逃避メカニズムが成立する.そのため,このような腫瘍にはPD -1経路阻害薬の治療効果が期待できるといわれている17),18()図2)9).これまでに肺がんにおけるnon -synonymous(アミノ酸置換が起こる非同義的)変異症例や,大腸がんならびに子宮体がんにおけるDNAミスマッチ修復(MMR)遺伝子欠損およびDNA Polymerase Epsilon(POLE)遺伝子変異症例では遺伝子変異数が著明に多く,PD -1経路阻害薬の治療効果との相関が示されている19).卵巣がんにおいてもMMR遺伝子欠損が10%前後と少なからず存在しており,さらに乳がん関連遺伝子BRCAの変異を認める卵巣がんでは,腫瘍局所の免疫学的変化(腫瘍のPD -L1発現や腫瘍内浸潤T細胞の増加)を認めることから,PD -1経路阻害薬の有用性が期待されていた20).しかしながら一方で,最新の論文では,悪性黒色腫において遺伝子変異数は治療効果とは相関せず,むしろBRCA2 遺伝子変異の有無とのほうが治療効果に相関するとの報告もなされ,さらにASCO2016遺伝子変異新規抗原↑(遺伝子変異)APC変異抗原を認識T cellT cell抗原提示T 細胞活性↑(抗腫瘍効果)IFN-γPD-L1/PD-1経路↑(免疫抑制)PD-1経路阻害薬有効性の指標?新規変異抗原PD-L1 PD-1T cellAPCがん細胞Mutanome Immunome多クローン性増殖図4がん細胞における遺伝子変異とPD- 1経路阻害薬の治療有効性のバイオマーカー探索イメージT cell:T 細胞APC:抗原提示細胞〔参考文献11)より引用改変〕