カレントテラピー 35-1 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.1 77企画埼玉医科大学かわごえクリニック院長片山茂裕本号では,「糖尿病性腎症の現況と進展阻止対策─ 生活習慣の修正と薬物療法─ 」をテーマに特集を組ませていただいた.ご承知のように,1998年以降,わが国の透析導入の原因疾患の第一位は糖尿病性腎症(以下,腎症)である.近年,その増加数はやや鈍り横ばいになったものの,減少に転じてはいない.このような現況を鑑み,厚生労働省が平成24年度の診療報酬改訂で「糖尿病透析予防指導管理料」を新設したのは記憶に新しい.2016年3月24日に,厚生労働省は日本医師会・日本糖尿病対策推進会議と連携協定を結び,「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」の全国展開を図っている.本特集でも疫学・経過・予後に次いで,この話題を取り上げた.また,キーワードの項で,全国の自治体のなかでトップランナーとなっている埼玉県方式をご紹介いただいた.腎症の成因・病態生理や腎症の疾患感受性遺伝子,病理学的特徴やそれらに基づいた診断についても,最近の進歩を各領域の専門家に解説していただいた.治療については,レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬を中心とした降圧治療に加えて,新しい経口血糖降下薬であるDPP - 4阻害薬やSGLT2阻害薬の腎症治療薬としての可能性についても詳しく解説していただいた.DPP - 4阻害薬が腎組織中で,抗酸化・抗炎症や線維化抑制などのさまざまな作用を発揮することが明らかにされつつある.SGLT2阻害薬はTGフィードバック機構を介して糸球体輸入細動脈を収縮させて糸球体内圧を低下させると想定される.われわれは,糸球体輸出細動脈を拡張して糸球体内圧を低下させるRAS阻害薬に加えて,新たな腎症治療のストラテジーを手にしたのかもしれず,今後の展開が期待される.食事療法も腎症の進展予防に重要であり,今回は代替治療として低タンパク食と減塩食を取り上げた.さらに治療薬解説では,現在開発中の新しい腎症の治療薬を概説していただいた.腎症治療薬の開発には,今までは血清クレアチニンの2倍化や末期腎不全(end-stage renal disease:ESRD)の発症・透析導入・腎死というハードエンドポイントが用いられ,多数の患者で長期間の試験が必須であった.最近,もっと短期間で到達可能なサロゲートエンドポイントを採用する動きがでていることを,キーワードの項で触れていただいた.最後に,欧米では「糖尿病性腎症(Diabetic Nephropathy)」という用語に代わり,「Diabetic Kidney Disease」が広く使われるようになっている.日本語で適切な訳語も決まっていないが,このあたりの事情もご解説いただいた.本特集が,読者諸氏の診療の一助となり,糖尿病患者の腎症の発症が予防され,進展が抑制され,透析に至る患者数が減少に転じる日が一日も早く来ることを期待したい.エディトリアル糖尿病性腎症の現況と進展阻止対策― 生活習慣の修正と薬物療法―