カレントテラピー 35-1 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.1 7373亢進,細胞周期の異常など,多くのメカニズムが存在し,さらに,腎組織に起こる微小な炎症(microinflammation)が加速因子として関与している(図1,表).1 RA系の亢進と糸球体血行動態の変化糖尿病状態では,糸球体の輸出入細動脈が拡張するが,輸出細動脈に比べて輸入細動脈の拡張が大きいために糸球体内圧の亢進が起こると考えられている.糖尿病状態では腎局所におけるRA系が亢進しており,アンジオテンシンⅡは前述のように腎輸出細動脈を収縮させて糸球体高血圧を引き起こす.また,アンジオテンシンⅡはメサンギウム細胞や近位尿細管細胞の増殖を促進させるほか,TGF -βの産生を亢進させることも知られている.また,monocytechemoattractant protein- 1(MCP- 1)などのケモカイン産生を介してマクロファージの集積を増強し,炎症を促進させる.このように,腎局所におけるRA系の亢進はさまざまなメカニズムで糸球体硬化と間質の線維化を引き起こす.現在,エンドセリンA受容体阻害薬1)とミネラルコルチコイド受容体(mineralocorticoid receptor:MR)阻害薬(後述)が腎症治療薬として開発が進められている.2 糖化反応糖尿病状態では蛋白質の非酵素的糖化反応(メイラード反応)が亢進し,生体内にAGEsが増加する.その結果,マクロファージやメサンギウム細胞に存在するレセプター(receptor for AGEs:RAGE)を介して,マクロファージの活性化やメサンギウム細胞からの細胞外基質の産生増加を惹起する.一方,AGE化を受けた細胞外基質は,酵素による分解を受けにくくなるため,細胞外基質の蓄積が起こる.最近,AGE阻害作用をもつpyridoxamineを用いて,腎症を対象とした治験が行われた.3 酸化ストレス高血糖状態ではNADPHオキシダーゼの活性亢進や,活性酸素の処理を行うSODの活性低下などにより,酸化ストレスが亢進する.また,グリケーションで形成されるアマドリ転位生成物やAGEsは,生成過程高血糖アルブミン尿・糸球体硬化・間質の線維化糸球体・間質の細胞の障害細胞外基質の増加酸化ストレス糸球体過剰濾過糸球体高血圧細胞内代謝異常炎症MicroinflammationRAS亢進TGF-βVEGF内皮細胞障害TGF-β受容体TGF-β-Smad経路高血圧,脂質代謝異常エピゲノム(MicroRNA)グリケーション(AGEs)ポリオール経路PKC活性化AGE阻害薬Pyridoxamine抗酸化薬BardoxolonePKCβ阻害薬ARISGLT2阻害薬RA系阻害薬MR阻害薬ET-A拮抗薬炎症を抑制する薬剤インフラマソーム図1糖尿病性腎症の成因と治療標的表 現在開発中の腎症治療薬の例1.Pyridoxamine dihydrochloride2.SGLT-2 inhibitor3.Endothelin receptor A antagonist4.Mineralocorticoid receptor antagonist5.JAK1/2 inhibitor6.Bardoxolone methyl