カレントテラピー 35-1 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.1 6161行う.蛋白質は過剰な摂取を避け(<1.3g/標準体重(kg)/日),総摂取カロリーの20%未満を目安にする.しかし,実際の糖尿病食における蛋白質量は,糖尿病食品交換表に従うと,エネルギー- 炭水化物比率を50~60%とした場合,おおむねその比率は15~20%となるものの,摂取量は総摂取エネルギー量にもよるが,およそ1.0~1.5g/ 標準体重(kg)/日となり,1.3g/標準体重(kg)/日以上となることもある(図1).特に炭水化物の比率を50~55%と設定した場合には,脂質比率を30%未満に抑えると,蛋白質比率が増加し,蛋白質摂取量も増加する(図1).では高蛋白質摂取は有害なのか.高蛋白質摂取による腎を含む臓器障害の可能性としては,Halbesmaらの報告によると,高蛋白質摂取群(1.38~3.27g/kg/日)は,1.10~1.26 g/kg/日の蛋白質摂取群に比べて心血管イベントの発症が増加する可能性が示されている2).一方でその高蛋白質食は,腎機能低下のない症例に対しては腎機能に影響を及ぼさなかった2).しかし,2.0g/kg/日の高蛋白質摂取により健康な高齢者の腎障害のリスクが上昇するとの報告3)や,軽度の腎機能低下〔推算糸球体濾過量(eGFR)55~88mL/分/1.73m2〕のある女性では,>1.3g/kg/日の蛋白質摂取により11年間の観察で腎機能低下が進行する(蛋白質摂取10g/日の増加に伴い,eGFR 7.72mL/分/1.73m2低下)という報告もなされている4).したがって,高度な腎機能低下を認めない本病期においても,腎症の発症・進展リスクおよび心血管疾患発症のリスクは高いため,基本的には>1.3g/ 標準体重(kg)/日の過剰な蛋白質摂取は避けるほうが望ましいかもしれない.以上,本病期において,減量あるいは血糖改善目的に低炭水化物の食事療法を行う場合には,蛋白質過剰摂取に伴うリスクが生じる可能性の観点からも50%未満の極端な制限を避けるほうが望ましく,また50~55%の炭水化物摂取比率の食事療法を行う際の蛋白質摂取量の増加に対しては十分な注意と長期的慎重な観察を行い実施することが肝要である.2 顕性腎症期~腎不全期顕性腎症期から0.8~1.0g/標準体重(kg)/日,糸球体濾過量(GFR)<45mL/分/1.73m2あるいは腎不全期では0.6~0.8g/標準体重(kg)/日の蛋白質制限を考慮することが推奨されている.蛋白質制限は進展した腎症に対する食事療法として推奨されているものの,蛋白質制限の腎症抑制効果に関するこれ糖尿病治療のための食事療法炭水化物 50~60%,蛋白質1.0~1.2g/標準体重kg/日,残りを脂質で摂るエネルギー比率炭水化物 : 60% 60% 55% 50%脂質 : 25% 23% 27% 30%蛋白質 : 15% 17% 18% 20%? ? ? ?25kcal/kg/日の場合0.94 1.06 1.13 1.25 g/kg/日28kcal/kg/日の場合1.05 1.16 1.26 1.4 g/kg/日30kcal/kg/日の場合1.13 1.28 1.35 1.5 g/kg/日図1糖尿病の食事療法と蛋白質量(糖尿病食事療法のための食品交換表第7版より作成)腎症病期エネルギー(kcal/標準体重kg/日)蛋白質(g/標準体重kg/日)食塩(g/日)腎症前期(1期) 25~30 <20%エネルギー比6.0未満(高血圧)早期腎症期(2期) 25~30 <20%エネルギー比6.0未満(高血圧)顕性腎症期(3期) 25~30 0.8-1.0 6.0未満〔GFR<45mL/分/1.73m2 25~35 0.6-0.8を考慮 〕腎不全期(4期) 25~35 0.6~0.8 6.0未満透析療法期(5期) 30~35 0.9~1.26.0未満(HD)除水量×7.5+尿量×5(CAPD)表1糖尿病性腎症の食事指針におけるポイントは蛋白質制限である〔参考文献1)より引用改変〕