カレントテラピー 35-1 サンプル

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36 Current Therapy 2017 Vol.35 No.136Ⅰ 糖尿病性腎症の臨床経過1型糖尿病における腎症の典型的な臨床経過は,微量アルブミン尿の出現により発症し(早期腎症),未治療であれば年間10~20%程度のアルブミン排泄量の増加を生じ,10~15年後に蛋白尿が陽性となる顕性腎症に移行する.顕性腎症期まで病期が進行すると,糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)が年間に2~20mL/分低下し,半数以上の症例で10年以内に末期腎不全に陥ると考えられている1).2型糖尿病では,糖尿病の発症時期が不明瞭であり,糖尿病診断時にすでにアルブミン尿や蛋白尿が出現していることがあるが,いったん腎症が発症すれば,その臨床経過は1型糖尿病とほぼ同様と考えられている1).わが国の2型糖尿病1,558例の約8年におけるJapan DiabetesComplications Study(JDCS)の検討では,アルブミン尿が30mg/gCr以下の群では,300mg/gCr以上になる頻度は年率0.23%であるのに対し,30~150mg/gCrの群ではその頻度は年率1.85%に上昇した.また,30~150mg/gCrの群が300mg/gCr以上になるリスクは,30mg/gCr以下の群の8.45倍であった2).Ⅱ 糖尿病性腎症の早期診断基準わが国では,1991年に(旧)厚生省班会議で「糖尿病性腎症の早期診断基準」が策定され,2005年に日本腎臓学会・日本糖尿病学会糖尿病性腎症合同委員会で改訂された(表1)3).この基準によると,尿中アルブミン測定対象は,通常の試験紙法で尿蛋白陰性か+1程度の陽性を示す糖尿病患者である.必須事項は微量アルブミン尿で,なるべく午前中の随時尿を用い,免疫測定法で尿中アルブミン値を定量する(同時に尿中クレアチニン値も測定する).3回測定中2回以上の尿中アルブミン値が30~299mg/gCr*1 金沢大学附属病院腎臓内科*2 金沢大学大学院腎病態統御学・腎臓内科学教授糖尿病性腎症の現況と進展阻止対策─ 生活習慣の修正と薬物療法糖尿病性腎症の診断大島 恵*1・清水美保*1・和田隆志*2糖尿病性腎症は,腎機能予後のみならず,心血管疾患の発症や生命予後の観点からも,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)において最も重要な疾患のひとつである.糖尿病性腎症の早期診断について,臨床的に微量アルブミン尿を指標とすることは確立し,「正常高値」域のアルブミン尿であっても,腎機能予後ならびに心血管予後の増悪に関連することが示されている.尿蛋白陰性あるいは軽度陽性の糖尿病患者においては,尿アルブミンを定期的に評価することが重要である.また,糖尿病性腎症病期分類の改訂により,CKD重症度分類との整合性が図られ,各病期に符合する腎組織所見の解析とバイオマーカーの探索が進められている.本稿では,糖尿病性腎症の診断と病期分類について概説する.