カレントテラピー 34-7 サンプル

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カレントテラピー 34-7 サンプル

Current Therapy 2016 Vol.34 No.7 61679Ⅱ 網羅的遺伝子関連解析(GWAS)2003年にヒトゲノム(人間のすべての遺伝情報)がほぼ解読され,ヒトゲノムは約30億対の塩基配列から成り立っており,およそ23,000個の遺伝子が存在することが明らかになった.ヒトゲノムには,塩基の欠失や重複さらに一塩基多型(single nucleotidepolymorphism:SNP)などが認められ,多様性が存在することもわかってきた.染色体の同じ位置の一塩基が個人により異なり,その頻度が1%以上あるものを一塩基多型と呼び,さまざまな疾患との関連性が報告されている.SNPは,3,000万カ所以上報告されており膨大な数にのぼるが,代表的なSNPを数百万搭載したSNP解析用チップが市販されており,それと次世代シークエンサーを使用することにより,疾患の原因となるSNPの解析が飛躍的に進んだ.Ⅲ NAFLD, NASH感受性遺伝子1 patatin-like phospholipase domaincontaining 3 gene(PNPLA3 )2008年RomeoらはMRIでNAFLDと診断したHispanic,African -American, European -American9,229人の患者を対象にGWASを行い,22番染色体近傍のpatatin-like phospholipase domain containing3 gene(PNPLA3 )のvariant(I148M)がNAFLDの感受性遺伝子であることを報告した3).PNPLA3 のSNP(reference SNP ID number:rs738409)で塩基がC→Gに変わると,PNPLA3 タンパク質の148番目のアミノ酸がイソロイシンからメチオニンに置換される(I148M).すなわち,このようなrisk alleleは肝臓の脂肪量(p=5.9×10-10)と炎症(p=3.7×10-4)に関係し,PNPLA3 rs738409[G]homozygoteはそうでないSNP例に比して肝臓の脂肪量が2倍多かった.PNPLA3 rs738409[G]allele頻度は,NAFLDに対して最も感受性の高い人種であるHispanicにおいて0.49と最も高値を認めた.また,中国人,インドネシア人,マレー人のNAFLDを対象にした検討においても,NAFLDのPNPLA3 rs738409[G]allele頻度は,0.49, 0.42, 0.44と,コントロールに比べて有意に高頻度であった4).厚生労働省NASH研究班(研究代表者 岡上 武)において肝生検でNAFLDと診断し,Matteoni分類5)に従いtype 1~4に分類した529例に対してGWASを行い,22番染色体上のPNPLA3 にコントロールに対して有意差のある6つのSNPを同定した.そのうちrs926633, rs1010023, rs2896019, rs 2076211の4つのSNPはp値が10-9から10-10の強い有意差を認めた.Romeoらが報告したrs 738409は,われわれが用いたSNP arrayには搭載されていないためTaqManRPCRで検討し,rs738409は上記4つのSNPと有意な(p=2.3×10-11)関連性を有し,コントロールに対して強い有意差(p=1.4×10-10 , Odds比:1.66, 95%信頼区間:1.43~1.94)を認めた.われわれの検討ではPNPLA3 はコントロールに比してNAFLDのなかでMatteoni type 1,2,3,4ともに高いOdds比を示したが,コントロールに比して有意に高いOdds比を示したのはtype 4のNASHのみであり,PNPLA3 はtype 4のNASHの発症・進展の感受性遺伝子であると報告した6).すなわち,PNPLA3 rs738409のG alleleの頻度はNAFLD全例とコントロールの間で有意差(p=1.4×10-10)を示したが,type 4とコントロールの比較ではさらに高いp値を示し,有意差(p=1.7×10-16 ,Odds比:2.18, 95%信頼区間:1.81~2.63)を認めた.それに対して,type 1+2+3とコントロールの比較においては,有意差(p=0.41)はなかった(図1).また,type 4とtype 1+2+3の比較においては,p=4.8×10-6,Odds 比= 1.96(95%信頼区間:1.47~2.62)と強い有意差を認めた(図2).ただし,この論文ではMatteoni type 3のNASHがわずか27例で,またNASH肝癌の解析が行われていなかったことから,NAFLD, NASH肝癌を追加し,NAFLD 844例,NASH肝癌58例とコントロール2,524例を対象に再度GWASを行い,新たに興味ある結果を得ることができた.