カレントテラピー 34-7 サンプル

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60 Current Therapy 2016 Vol.34 No.7678Ⅰ はじめに肥満や糖尿病などの生活習慣病の増加とともに,非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fattyliver disease:NAFLD)が増加している.また,NAFLDは,組織学的に肝細胞の脂肪沈着のみを認め,予後の良好な単純性脂肪肝(nonalcoholic fattyliver:NAFL)と,組織学的に壊死,炎症や線維化を認め,肝硬変・肝臓癌に進行する危険性のある非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)に分けられる.NAFLDの発症には肥満の要素が大きいが,NASHの発症・進展はTilgらが提唱したmultiple parallel hits hypothesisにみるように数々の因子が同時に複雑に関与している1).肥満とともに,糖尿病などの生活習慣病がNAFLDやNASHの発症・進展に関与しているが2),これらがコントロールされていても進展がみられる患者が存在し,NASH発症・進展に遺伝学的素因の関与が想定される.また,線維化進展の高齢NASH患者に肝発癌がみられることが多く,糖尿病や高血圧は発癌の危険因子であるが,遺伝学的素因も重要と考えられる.本稿では,肝生検で診断したNAFLDと背景肝組織がNASHであることを確認したNASH肝癌症例に網羅的遺伝子関連解析(genome wide associationstudy:GWAS)を行い,NASH発症・進展と肝発癌の感受性遺伝子の同定を試みたのでその意義について述べる.*1 大阪府済生会吹田病院消化器内科・副院長*2 大阪府済生会吹田病院消化器内科・名誉院長NAFLD/NASH─ 病態に基づいた診断,治療戦略NAFLD/NASH,肝発癌における遺伝学的素因島 俊英*1・岡上 武*2非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)の家族集積例の存在,NAFLDの20%前後が非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)に進展すること,NASHのなかにも肝硬変・肝癌に進展する例や予後良好な例が存在することなどにより,NASH発症・進展に遺伝的要因が存在することが示唆されてきた.本稿では,NAFLD/NASH の発症や,線維化進展,さらにNASH 肝発癌に及ぼす遺伝学的素因の影響について述べた.網羅的遺伝子関連解析(genome wide association study:GWAS)を用いた一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)の解析から,NASH 発症・進展の感受性遺伝子として,22 番染色体上のpatatin-like phospholipase domain containing 3 gene(PNPLA 3 )のrs 738409 variant(I 148 M)が同定された.PNPLA 3 rs 738409 variant は,NASH肝発癌にも関与しており,最近われわれはPNPLA 3 以外にもNASH肝発癌に関与している遺伝子を同定した.