カレントテラピー 34-5 サンプル

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72 Current Therapy 2016 Vol.34 No.5482路とその薬剤を示す.上皮成長因子受容体(epidermal growth factorreceptor:EGFR)は膜貫通型タンパクであり,PI3KおよびMEK -Erk経路を介してがんの増殖,生存,浸潤・転移に関与している.セツキシマブはEGFRのリガンド結合部位に強力に結合することで,EGFなどのリガンドとの結合をブロックし,またHER2との2量体形成を阻害することでシグナルを阻害する.一方で,EGFRは細胞質内にシグナル伝達に重要な役割を果たすチロシンキナーゼドメインを有しており,ゲフィチニブはこのドメインを選択的に阻害し腫瘍の増殖を抑制する.また,ラパチニブは2量体を形成するEGFRとHER 2双方のチロシンキナーゼドメインを阻害することで抗腫瘍効果を発揮する.一方,血管内皮細胞に発現する血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor受容体:VEGFR)は血管新生を阻害する分子標的薬の標的である.ベバシズマブはそのリガンドであるVEGFに結合してVEGFRとの結合阻害を惹起することで,ソラフェニブはVEGFRのチロシンキナーゼドメインに結合することで下流のシグナル伝達を阻害し,血管新生を抑制する.現在,実臨床で放射線治療との併用が試みられている唯一の分子標的薬はセツキシマブである.特に,頭頚部腫瘍ではEGFRの発現が多く10),腫瘍サイズ増大,再発リスク,予後因子であることが報告されており11),第Ⅲ相試験が行われた.その結果,放射線治療単独に比べ,局所制御率および全生存率が有意に改善されたことが報告されている(生存期間中央値で放射線単独29.3カ月,併用群49カ月)12).また,基礎研究でもセツキシマブは放射線増感作用があることが報告されている13).一方で,RTOG 0522の報告によれば,加速分割照射を用いた放射線治療にCDDPとセツキシマブを用いた場合,放射線とCDDPの組み合わせと比べ全生存率に差はなかったが,grade3~4の粘膜炎と皮膚障害が有意に増加することが報告されている14).したがって,IMRTを用いるなど,耳下腺や脊髄のみならず,粘膜炎や皮膚に対する線量の低減も考慮する必要がある.Ⅴ 化学療法・分子標的薬との併用治療の将来実臨床における化学放射線療法の適応は,患者因子や病期,組織型,腫瘍部位などを考慮して決定される.しかし,同様の腫瘍でも治療効果や治療成績は異なるものとなる.したがって,患者ごとに化学放射線療法が有効であるか,すなわち,オーダーメイド化学放射線療法が今後重要になってくると考えられる.その方法のひとつが機能MRIや,PET等の分子イメージングである.例えば,FDG -PETではCTで縮小が不明瞭な症例でも集積の低下を解析することでPI3KAKT RASRAFMEKErkチロシンキナーゼドメインEGFRHER2セツキシマブ(直腸癌,頭頚部腫瘍等)トラスツズマブ(HER2過剰発現乳癌,胃癌)ゲフィチニブ(EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌)ラパチニブ(HER2過剰発現乳癌,頭頚部腫瘍)TGF-α EGFVEGFRVEGFソラフェニブ(腎細胞癌,肝細胞癌)mTORエベロリムス(腎細胞癌,乳癌等)増殖,生存,浸潤,転移,血管新生CD20CD33ベバシズマブ(直腸癌,乳癌,悪性神経膠腫)ゲムツズマブ(CD33陽性急性骨髄性白血病) リツキシマブ(CD20陽性B細胞性非ホジキンリンパ腫)図2分子標的薬の作用機序と疾患への適応