カレントテラピー 34-4 サンプル

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10 Current Therapy 2016 Vol.34 No.4322pembrolizumab6)~8),pidilizumab9)などがあり,またCTLA - 4を阻害する薬剤としてtremelimumabがある10).また,PD- 1のリガンドであるPD-L1をターゲットにした薬剤として,BMS - 93655911)やatezolizumab(MPDL 3280 A)12),MEDI 473613)などの開発が進められている.さらに,別の共刺激分子/共阻害分子をターゲットとした薬剤の開発も世界的に進められている.4- 1BBに対してurelumab14),PF - 0508256615)などが,またLAG 3に対してBMS - 98601614)といった薬剤の開発が進められている.一方,CD28をターゲットにした薬剤は,重大な有害事象として高サイトカイン血症が生じ開発が中止となっている16).最終的にどの薬剤がより優れているのかは,臨床試験を通じて効果と有害事象が明らかになってくることで定まってくるであろう.なお,ターゲットが同じであっても,抗体のサブタイプが異なると細胞障害活性が異なり,抗腫瘍効果に差異が生じる.どの分子をターゲットにするのがベストか,またターゲットが同じでもどの薬剤がベストなのか,免疫チェックポイントに作用する薬剤の今後の開発の推移に期待をしたい.ただ,今後優れた薬剤がどんどん開発されても,1つの薬剤で多くのメラノーマを治癒させるという訳にはいかないかもしれない.がん細胞は均一な細胞集団ではなく,さまざまな遺伝子異常を有した細胞から成るheterogenousな集団である17).1つの薬剤が効果を発揮しても,一部のがん細胞がその薬剤の効果をすり抜けてしまう可能性がある.特にメラノーマは多数の遺伝子変異を有しているので18),いくつかの薬剤を組み合わせることが重要と思われる.最近,ニボルマブとイピリムマブを併用する臨床試験の結果が報告されているが,ニボルマブやイピリムマブを単剤で用いた場合より効果が高いことが明らかになっている19),20).CRとPRを合わせた奏効率は53%に達し,従来の治療法を大きく上回る効果が得られた.ただし,治療効果とともに有害事象の頻度と程度も高まっている点には,注意を払わねばならない.従来,免疫に作用する治療法は自分の免疫機能を用いるので体に優しい,というイメージが一般的であった.しかし,ニボルマブやイピリムマブでは,免疫活性が高まり腸炎,甲状腺炎,下垂体炎,肝炎といった免疫関連の有害事象が生じる.併用療法を実施する際には,有害事象の頻度と程度が許容される範囲に収まるかが重要であろう.Ⅲ ワクチン療法がん細胞に特異的かつ高発現の自己抗原が存在している.精巣でも発現していることが多いため癌・精巣抗原と呼ばれ,現在200以上の癌・精巣抗原が知られている(http://www.cta.lncc.br/).癌・精巣抗原由来のペプチド等を投与して,生体内でがん細胞に対する免疫反応性を誘導し,抗腫瘍効果を高める治療法がワクチン療法である.メラノーマでは癌・精巣抗原として,MAGE-Aファミリーをはじめとしてさまざまな抗原が発現しているが,注目を集めている抗原のひとつにNY-ESO-1がある.NY-ESO-1は強い抗原性を有し,ステージⅢ・Ⅳのメラノーマ患者では30~40%で抗NY-ESO-1抗体が陽性である21).NY-ESO-1由来のペプチドを投与して,抗腫瘍活性を高める臨床試験も実施されている.効果的であったという症例がある一方,現時点では明確な効果は確認できていない.NY-ESO-1のペプチドに反応するものの,がん細胞に反応するCD8+T細胞は,通常のワクチン療法では十分には誘導できないようである22).現在さまざまなワクチン療法の臨床試験が進められており,進行期メラノーマに対してどの程度の効果が得られるのか結果が待たれる23).Rosenbergらは,ワクチン療法の効果は非常に低いと述べ,その効果に懐疑的である24).臨床試験も試みられているが,承認に至ったワクチン療法はない.しかし,ワクチン療法は無意味であると判断するのは早計であろう.がん細胞に反応するCD8+T細胞を誘導しやすいアジュバントの開発,単独ではなく複数のペプチドを組み合わせたペプチドカクテルの利用,また免疫チェックポイント阻害薬との併用など,新たな試みのなかから,ブレークスルーが生まれる可能性が秘められているかもしれない.期待されているアプローチのひとつに,neoantigen