カレントテラピー 34-4 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.4 7319メラノーマ― 基礎から最新薬物療法まで―企画京都府立医科大学大学院医学研究科分子標的癌予防医学教授酒井敏行皮膚がんだけでなく,がん全体を見渡しても,メラノーマは最も難治性のがんのひとつであった.特に有効な化学療法に乏しく,長年にわたり,その治療薬の出現が待たれていた.近年になり,抗CTLA - 4 抗体のイピリムマブや抗PD - 1抗体のニボルマブなどの免疫チェックポイント阻害剤や,BRAF変異メラノーマ患者に対するBRAF阻害剤のベムラフェニブやダブラフェニブ,あるいはMEK阻害剤トラメチニブなどの登場により,奏効率,生存率ともに劇的に改善した.例えば旧来の抗がん剤による進行性BRAF変異メラノーマ患者に対する奏効率は約5%であったのに対し,BRAF 阻害剤ダブラフェニブとMEK 阻害剤トラメチニブを併用することにより,奏効率は約75%にまで劇的に改善した.また抗CTLA - 4抗体イピリムマブと抗PD - 1抗体ニボルマブの併用により,進行性メラノーマ患者に対して約50%の奏効率が示された.重要なのは,免疫チェックポイント阻害剤はメラノーマ細胞を抗腫瘍免疫担当細胞により外から攻撃するのに対し,BRAF阻害剤やMEK阻害剤のような低分子標的薬は細胞内の発がん原因であるBRAFを細胞内で攻撃する治療法であるので,それらは互いに拮抗するものではなく,むしろ相加相乗的に働く可能性が期待されることである.したがって,今後は免疫チェックポイント阻害剤とBRAF阻害剤/MEK阻害剤との併用がさらに,生存率を向上させることにつながることが期待される.私自身は,スクリーニング方法をJT医薬総合研究所に提供することにより,British PharmacologicalSocietyから2013年のDrug discovery of the yearに選ばれたfirst-in-classのMEK阻害剤トラメチニブの発見に関わったものの,メラノーマの専門家ではない.そのため,今回はメラノーマが専門の先生方に相談させていただきながら,全国の第一線で活躍されておられる先生方に執筆をお願いして,ようやく特集を出させていただくことになった.最後に,執筆いただいた各先生方,ならびに,座談会にご出席いただいた,国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科部長の山﨑直也先生と,静岡県立静岡がんセンター皮膚科部長の清原祥夫先生に深謝いたします.エディトリアル