カレントテラピー 34-11 サンプル

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カレントテラピー 34-11 サンプル

10 Current Therapy 2016 Vol.34 No.111050列の特異性の高い可変領域(variable region)が交互に存在する構造をもつ.定常領域に設計したプライマー(ユニバーサルプライマー)を用いることで,理論的には細菌叢中のすべての細菌種のvariable regionを増幅し,シークエンシングすることが可能である.図2にNGSであるMiSeqを用いたメタ16S解析の手法を示した.NGSは一稼働で大量の配列が得られるため,多検体を混合し同時にシークエンシングを行うのが一般的である.このためには,ユニバーサルプライマーに検体ごとに特有な10塩基程度の認識配列(バーコード)を付加し,複数検体の16Sアンプリコンを混合後,シークエンシングを行う(バーコードシークエンシング).シークエンシングで配列データを取得した後は,得られた配列のクオリティチェックを行った後,各配列の相同性に基づいてクラスタリングを行うことで,operational taxonomic units(OTU)と呼ばれる単位を作成するのが一般的である.各OTUの代表配列を既知の16Sデータベースに照会することで,菌種帰属を行い腸内細菌叢を構成する菌種を明らかにする.この工程で形成されたOTUの数は細菌叢を構成する菌種の数を,各OTUに含まれるリードの量はその菌の菌叢における存在量と考えることができるため,腸内細菌叢の構造を解明することが可能である(図3).OTUの菌種帰属に用いられるデータベースにはRibosomal Database Project6), Greengenes7),SILVA8)など複数が存在する.2 メタゲノム解析メタ16 S 解析では,16 S配列のみを増幅し解読するため少ないデータ量で細菌叢の構造について調べることはできるが,菌叢全体がもつ機能についての情報を得ることは難しい.細菌叢全体のDNAに対しホールゲノムショットガン(WGS)法を用いて網羅的な配列決定を行うメタゲノム解析では,細菌の機能遺伝子の配列も解読されるため,菌叢全体がもつ機能についての知見を獲得することが可能である.図4にメタゲノム解析の流れを示す.NGSを用いたWGSで配列データを得た後は,クオリティチェックを行い,低クオリティのデータの除外を行う.また,シークエンシングの過程で生じるアーティファクトな配列であるduplicatedリード(塩基配列の開始点から終了点まで同じ配列をもつリード)や,一定量混入しているヒトゲノム配列を除く必要もある.上記の工程を経て得られた高品質なメタゲノムデータをアセンブルすることで,重複のない配列を作成する.その後,メタゲノム用に開発された遺伝子予測プログラムであるMetaGeneAnnotator9)等のツールを使用し,遺伝050100150200250020406080100(%)ビフィドバクテリウムクロストリジウムストレプトコッカスバクテロイデスユーバクテリウムメガモナスルミノコッカスコリンセラその他フィーカリバクテリウムプレボテラ~7カ月(乳児)1.5~8歳(子ども)19~59歳(大人)AB 図3メタ16 S 解析例0~59歳までの日本人健常者の腸内細菌叢のメタ16S解析結果.A:菌種多様性の解析結果各検体3 , 000 の16 Sリードを用いて形成されたOTU 数は菌叢を構成する菌種数とみなすことができる.新生児期に限られていた菌種の数が成長に伴って増加するのがわかる.B:菌組成の解析(属レベル)腸内細菌叢は個人ごとに特徴をもっていることがわかる.