カレントテラピー 34-11 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.11 71047腸内細菌と諸疾患─ここまで明らかになった腸内細菌と全身疾患の関連─企画東京医科歯科大学副学長/消化器内科教授渡辺 守ヒトの腸管には約1,000種,100兆個の細菌が存在し,腸内細菌のもつ総遺伝子数はヒトのもつ遺伝子の100倍以上に上ることが明らかとなり,腸内細菌をひとつの組織としてとらえる考え方が広まりつつある.腸内細菌の新たな機能が次々と解明され,これまで予想もされなかった病態における腸内細菌およびその代謝産物の役割が報告されている.さらに,次世代シーケンサーを用いたメタゲノム解析技術の向上により,腸内細菌叢の解析がきわめて身近なものとなった結果,腸内細菌叢が腸管恒常性維持に与える影響が解明されてきた.2006年にGordonらによって,肥満マウスの腸内細菌を無菌環境の正常マウスに移植することにより肥満が“感染”するというセンセーショナルな論文が発表された.これ以後,腸内細菌と疾患との関連は非常に重要なトピックスのひとつとなり,潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患のみならず,多発性硬化症,関節リウマチなど自己免疫疾患や肥満,糖尿病,動脈硬化などの生活習慣病,さらに,がんや自閉症などの発達障害に至るまで腸内細菌叢における細菌種構成異常(dysbiosis)が疾患と密接に結びついていることが明らかになってきている.このような背景のなかで,2013年に糞便微生物移植(fecal microbiota transplantation:FMT)による再発性Clostridium difficile 感染症の治療成功以来,潰瘍性大腸炎,過敏性腸症候群などの腸疾患はもとより,生活習慣病などにも臨床試験が行われ始めた.現時点で良好な成績の報告は得られていないが,まさに腸内細菌を標的とした治療応用が考慮される時代に入っている.2016年4月の日本内科学会総会でも「腸内細菌と疾患」がシンポジウムとして取り上げられており,本企画は誠にタイムリーと言える.エディトリアル