カレントテラピー 34-11 サンプル

カレントテラピー 34-11 サンプル page 17/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 34-11 サンプル の電子ブックに掲載されている17ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 34-11 サンプル

Current Therapy 2016 Vol.34 No.11 671107CD腸炎に対する症例報告やケースシリーズの報告が相次いだ.2011年に行われた米国のいくつかの州を対象としたCD腸炎に関する調査では,約15,000人の患者が確認され,その約25%が院内感染であった2).この時点で,全米では一年間に45万人の患者の発症と約3万人の死亡が推定された.また,CD腸炎の重症化と関連するNAP1(North American pulsed-field gelelectrophoresis type 1)株は院内感染の30%にみられた2).CD腸炎に対するFMTの有効性,安全性が確立されるにつれ3),FMTの社会的,医学的必要性が著しく増している.このような背景を基に,現在,IBD,過敏性腸症候群,メタボリック症候群などに対する有効性が検討されている.Ⅲ FMTの実際1 FMTの適応現在,効果の確実性からみたFMTの適応は再発性,難治性CD腸炎である.FMTは,バンコマイシンと比較して経費,効果の面で勝るとされる4).2013年に発表されたCD腸炎の治療ガイドラインでは,バンコマイシン不応性の再発性CD腸炎に対する補助療法としてFMTが推奨されている5).一方,重症例や巨大結腸症などを合併した重症例に対する効果と安全性はいまだ確立されていない6).FMTの適応については,CD腸炎の重症度やさらなる病状の悪化の予測などを勘案して決定されている.2 ドナーの選択FMTのドナーとしては,配偶者,親兄弟,友人,非血縁者などさまざまな報告があるが,その選択にはさまざまな要因が考慮される7).生活をともにしている配偶者などは,ドナー(糞便の提供者)からレシピエント(患者)への感染症伝播の可能性は低い7).また,一親等間では理論的に腸内細菌叢の構成が近いと考えられ,レシピエントの免疫システムへの刺激は少ないと考えられる.IBDなどの遺伝的素因の関連が疑われる疾患では,厳格にスクリーニングされた非血縁者ドナーの便が望ましいとされる.非血縁者のドナー便のバンク設立の構想もある.できる限りの感染症をスクリーニングして感染症の伝播のリスクを下げることと,腸内細菌叢の16 S rRNAもしくはメタゲノム解析から機能的にも最適な便が選択できるような状況が理想的と考えられる.3 ドナーのスクリーニングKellyらの報告によると,FMTのドナーとして3カ月間抗生剤の服用歴のない健康人(消化器疾患,自己免疫疾患,アレルギー疾患,免疫抑制剤の使用,糖尿病やメタボリック症候群,悪性疾患などが除外されること)が推奨されている7).ドナースクリーニングに要求される検査項目としてはA型肝炎ウイルス抗体(IgM),B型肝炎ウイルス抗原,C型肝炎ウイルス抗体,HIV抗体検査,便中CDトキシン,便腸内細菌叢に作用しそのバランスを改善する事により生体に利益をもたらす,生きた微生物および微生物代謝物を含む製品プロバイオティクス正常(健康)なドナー便(腸内細菌)を直接患者腸管に投与して,腸内細菌叢自体を置き換えることにより改善効果を期待する治療法糞便微生物移植療法有害な細菌を減少させ,感染症を治療する目的で投与される薬剤アンチバイオティクス上部消化管で分解されず,生体に利益をもたらす微生物の増殖を促進し,生体に有益な作用を示す食事成分プレバイオティクスプロバイオティクスとプレバイオティクスの両者を併用する方法シンバイオティクス腸内細菌叢の変化粘膜の免疫機構の制御粘膜上皮へのエネルギー提供消化管の蠕動運動,血流の改善など図腸内細菌を標的とした治療法〔参考文献1)より引用改変〕