カレントテラピー 33-11 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.11 731123甲状腺癌に対する分子標的薬─ソラフェニブ,レンバチニブ,バンデタニブ─日本医科大学内分泌外科助教 長岡竜太日本医科大学内分泌外科教授 杉谷 巌1 はじめに進行甲状腺癌に対して有効な化学療法はこれまでほとんどなかったが,腫瘍増殖や血管新生を阻害する分子標的薬が開発されてきたことから,その薬物療法は急速に変化しつつある.3つの分子標的薬について紹介する.2 ソラフェニブVEGFR 1- 3, RET, RAF, KITなどを標的とするマルチキナーゼ阻害薬(MKI)である.2014年6月,「根治切除不能な分化型甲状腺癌」に対する適応が追加承認された.その根拠となった国際第Ⅲ相試験(DECISION試験)では,放射性ヨウ素(radioactive iodine:RAI)治療抵抗性かつ14 カ月以内に病勢進行が確認された症例が対象とされた.無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)中央値はソラフェニブ群10.8カ月,プラセボ群5.8カ月と,ソラフェニブ群で有意に延長を認めた(ハザード比:0.59, 95%信頼区間:0.45~0.76,p<0.0001).有害事象(adverse event:AE)としては,手掌・足底発赤知覚不全症候群〔手足症候群(hand-foot syndrome:HFS)〕,脱毛,皮疹,下痢,高血圧などが報告されている.特に日本人ではHFSの出現頻度が高いとされ,保湿,刺激除去,角質処理などの予防措置が重要となる.3 レンバチニブVEGFR 1- 3, FGFR 1- 4, PDGFR, RET,KITを標的とするわが国において開発されたMKIである.2015年5月に根治切除不能な甲状腺癌に対し適応承認された.国際第Ⅲ相試験(SELECT試験)ではRAI治療抵抗性で13カ月以内に進行が確認された分化癌が対象とされ,プラセボ群のPFS中央値が3.6カ月であったのに対し,レンバチニブ投与群では18.3カ月と著明な延長を認めた(ハザード比:0.21, 95%信頼区間:0.14~0.31, p<0.0001).主なAEには,高血圧,下痢,倦怠感,HFSやタンパク尿などがある.日本人を対象とした第Ⅱ相試験では,未分化癌,髄様癌に対する有効性も示された.4 バンデタニブRET, VEGFR2- 3, EGFRを標的とするMKIで,局所進行性・転移性髄様癌に対する国際第Ⅲ相試験(ZETA試験,日本は参加せず)にて,PFS延長効果が示された(ハザード比:0.46,95%信頼区間:0.31~0.69, p<0.001).AEとして,下痢,発疹,悪心,高血圧,頭痛,QT延長などのほか,間質性肺炎が報告されている.5 おわりにMKIの登場により甲状腺癌の薬物療法は新時代を迎えたが,その適応選択にあたっては,分化癌(乳頭癌,濾胞癌,低分化癌)ではRAI抵抗性が証明された病勢進行が明らかな例に限るなど,基準を遵守したうえで,患者のquality of survivalに十分に配慮した慎重な姿勢が求められる.薬剤の有用性を最大限に引き出すためには,多彩なAEに対する適切なマネジメントが重要であり,他科との連携や多職種による対応など,チーム医療体制の構築が鍵となる.がん診断と治療の最近の動向─ 個別化医療の発展