カレントテラピー 33-11 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.11 71治療薬解説1121測,あるいは予後予測マーカーが明らかにされると考えられる.現在,この免疫細胞とりわけT細胞の腫瘍の正常組織における先端部分(invasive front)への浸潤が重要視され,同部のT細胞への浸潤とマイクロサテライト不安定性(microsatellite instability:MSI)との関連に関して盛んに研究が進んでいる.少なくとも大腸がんにおいてはMSIが高いものはT細胞の浸潤が認められ,マイクロサテライトが安定(microsatellite stable:MSS)の場合はT細胞の浸潤が認められにくいことより9),現時点では抗PD - 1抗体療法に不応性と考えられる大腸がんをはじめとしたがん腫に対して治療の糸口が見つかるのではないかと期待されている.Ⅷ 開発が進む抗PD-1/PD-L1抗体療法との複合療法開発が進んでいる抗PD - 1抗体のニボルマブとの複合免疫療法の相手としては抗CTLA- 4抗体(ipilimumab),抗KIR(lirilumab)抗体,抗LAG3(BMS-986016),抗CD137抗体(urelumab),GVAX+listeria(CRS207),抗CCR4抗体(モガムリズマブ)などがある.同じく抗PD- 1抗体のpembrolizumabのコンビネーションの相手として抗CTLA - 4抗体(イピリムマブ),エルロチニブ,ゲフィチニブ,brafenib,trametinib,Peg -IFN -α2bほか,さまざまなものがある.抗PD - L 1 抗体のMEDI 4736に関しては, 抗CTLA - 4 抗体(tremelimumab),抗OX 40 抗体(MEDI 6383),抗PD - 1抗体(pembrolizumab),ISIS-STAT3rx:STAT3 reducer(AZD5312),抗CCR 4抗体(モガムリズマブ)などとの併用療法の開発が進行中あるいは予定されている.現在,免疫チェックポイント阻害剤の中心はその有効性と副作用のバランスから抗PD - 1抗体,抗PD -L1抗体により進んでいる.このため,今後も当面はPD - 1/PD -L1を基軸とした併用療法の開発が進むと考えられる.併用療法の相手として,化学療法,分子標的療法,他の免疫療法,放射線療法などが主に想定される.本来は免疫療法において免疫の活性化,特にT細胞の活性化が必須であることから,何らかの活性化療法と免疫チェックポイント阻害剤の併用療法が進むことが容易に推測される.特に,日本においてはペプチドワクチン療法が盛んに行われたことより,これらとの併用が今後進められる可能性がある.一方米国でもペプチドのmutationに注目しneo onco-antigenの重要性が再認識されつつあることから,これらmutantを含めたペプチド免疫療法との併用が日米で進む可能性もある.Ⅸ おわりに今注目されている免疫チェックポイント阻害剤に関して,抗PD- 1/PD-L1抗体療法を中心にその開発の背景,メカニズム,現況などを述べた.これは免疫活性化による治療法の開発に対する反省として開発された免疫チェックポイント阻害剤を用いた免疫療法であったが,今日では重要な地位を占めるようになった.これらに関連する免疫制御機構および,免疫監視機構のコントロールを目指したがん免疫療法は今後の新規免疫療法を開発するうえで大きな潮流となっている.免疫チェックポイント分子あるいはそのリガンドであるCTLA- 4, PD- 1, PD-L1, PD-L2,B7-H4, LAG- 3, Tim3等のkey moleculeを標的とすることで,免疫監視逃避機構やT細胞の疲弊の回避などを目指し,より安全でがん特異的な次世代型免疫療法の開発が進められている.今後の課題としては,その有効性と関連するバイオマーカーの検索や有効性をあげる複合療法の確立,あるいは非常に高価な治療法のためどこで中止ができ,どこで再投与すべきかといったスタディが必要と考えられる.これらは基盤的研究や理論上のメカニズムとの整合性が必須であり,基礎腫瘍免疫研究者あるいは周囲の分野の研究者と腫瘍内科医の頻繁なキャッチボールが必要であることは申すまでもない.