カレントテラピー 33-11 サンプル

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カレントテラピー 33-11 サンプル

68 Current Therapy 2015 Vol.33 No.111118Ⅳ PD-L1/PD-1相互作用によるT細胞活性化抑制T細胞受容体とCD3複合体は活性化シグナルを伝達するモチーフ(immunoreceptor tyrosine-basedactivation motif:ITAM)がチロシンリン酸化を受け活性化される.ところが,PD- 1にリガンド(PDL1あるいはPD -L 2)からのスイッチがオンされると,抑制性シグナルを伝達するモチーフ(immunoreceptortyrosine-based inhibitory motif:ITIMあるいはITSM)もチロシンリン酸化され,チロシンホスファターゼSHP - 2がこのITIMのチロシンリン酸化に結合する.この結合したSHP- 2が周囲のITAMのリン酸化を脱リン酸化することで,抗原受容体刺激によりT細胞活性化信号を不活化する(図2).つまり,T細胞における免疫系が活性化されるとそれに引き続いて抑制系が始動する.本来は免疫系の暴走が抑制できる非常によくできた免疫系のブレーキといえる.これががん免疫療法において本来加速しなくてはいけないアクセルに対し,ブレーキとして働いてしまうことが問題となってきた.Ⅴ 腫瘍におけるPD-L1の恒常的発現と誘導による発現抗原提示細胞とT細胞間の副シグナル因子の一部が抑制系であるため,T細胞上のこの副抑制因子が注目されたことは先に述べた.この代表格のひとつにCTLA - 4があり,このリガンドとして樹状細胞上のB7.1/B7.2が知られている4).これに対し,このT細胞上の抑制系副因子のリガンドの中に腫瘍上に発現しているものが見つかった.この代表的なものにPD -L1(別名B7-H1)があり,そのT細胞上の受容体PD - 1とともに免疫チェックポイント阻害剤の標的として注目されている(図1)5),6).実際にこれらのシグナルがどのような状況でどれくらい重要な役割を果たしているか,不明な点も多く基盤的研究としても重要性を増している.各種のがんでPD -L1を発現している場合,予後あるいは腫瘍の大きさに逆比例するなどの報告が相次いでいる7),8).他の研究と合わせてみると,腫瘍とT細胞間のシグナルが腫瘍からの免疫逃避機構において重要な役割を担っており,これを解除することこそががん免疫が発揮できる機序であると考えられるようになった.刺激系抑制系MHC TCRPD-L1PD-L1PD-L2B7.1/2(CD80/86)抗原提示細胞B7.1/2(CD80/86)ICOSLICOSLICOSLIGHT HVEMCD40CD40CD40LCD28??4-1BBL 4-1BBOX40L(CD134L) OX40(CD134)OX40LGalectin9Galectin9CancerPD-L1B7-H3B7-H3B7-H4B7-H4Parenchymal CellGalectin9Tim3CTLA-4Signal 2Signal 2PD-1PD-L1LAG3Tリンパ球Signal 1はMHC/TCRシグナル図1免疫シナプス