カレントテラピー 33-11 サンプル

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カレントテラピー 33-11 サンプル

40 Current Therapy 2015 Vol.33 No.111090れる.特に,末梢型の原発性肺癌はよい適応である.脳腫瘍と異なり,体幹部腫瘍に定位放射線照射を行ううえで大きな課題となるのは,呼吸性移動や体動による腫瘍の動きである.そのため,体幹部腫瘍に対する定位放射線照射においては,正確な患者固定法および呼吸抑制法や呼吸同期法と毎回の治療前の照射野照合法の確立が非常に重要となる.照射線量は,部位により異なるが,1回10~15Gyで4~5回の照射が用いられることが多く,固定多門照射で行われることが一般的である.肺癌に対するSBRTの1例を図1に示す.SBRTは手術に比し低侵襲で,高齢者や低肺機能,合併症などによりこれまで手術不能とされてきた患者にも比較的安全に施行可能であり,手術に匹敵する局所制御率が得られる.現在では,手術不能例では標準治療に,また,手術可能例でも手術の代替治療として,位置づけられている.本邦で行われたIA期非小細胞肺癌を対象とした定位放射線治療の第Ⅱ相試験(JCOG0403)では,標準手術可能例および標準手術不能例の3年全生存割合76%,59.9%であった2).ただし,間質性肺炎のある患者では,放射線治療により,致死的な放射線肺臓炎をきたす可能性が極めて高く,禁忌とされている.前述のように,定位放射線治療を行うためには,高い精度が要求されるため,放射線照射装置があるすべての施設で施行可能なわけではない.放射線腫瘍認定医,医学物理士,放射線治療品質管理士,認定診療放射線技師,などの十分なスタッフと,十分な放射線治療関連機器が整備された施設でのみ施行可能である.日本放射線腫瘍学会による2010年構造調査結果では,体幹部定位照射を施行している施設数は203施設,定位放射線治療の年間症例数は3,500例以上であったが,施設数,症例数ともにその後さらに飛躍的に増加していると推察される.Ⅲ 強度変調放射線治療(intensitymodulated radiation therapy:IMRT)1 IMRTの定義と本邦における現状通常の放射線治療は,照射野内の放射線強度はすべて均一である.これに対し,IMRTでは,空間的・時間的に不均一な放射線強度をもつ照射ビームを多方向から照射することにより,病巣部への放射線の集中性をさらに増すとともに周囲の重要臓器の照射線量を低下させることが可能となった.病巣部に重要正常臓器が隣接し,かつ腫瘍制御に高線量を要する腫瘍が本治療のよい適応であり,線量増加による治療成績の向上と,正常組織の線量低減による有害事象の軽減が同時に期待できる.前立腺癌における従来の3D -CRTとIMRTの線量分布図の比較を示す(図2).IMRTの歴史はまだ浅く,国内では2000年に5施設で臨床応用が開始された.2008年には,中枢神経腫瘍,頭頸部腫瘍,前立腺癌に対し保険適応となり,さらに,2010年からは,すべての限局性固形悪性腫瘍に対し保険適応となった.今後,IMRTの需要は増加の一途をたどると思われる.現在,IMRTを施行可能な施設は国内で100施設を超えるものの,IMRTの需要に追い付いているとは言い難い.今後(a)3D-CRT (b)IMRT図2前立腺癌における3D-CRTとIMRTの比較IMRTでは,直腸(→)への照射線量を低減することが可能である.